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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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67/111

五界の全面衝突開始五界の全面衝突開始 ――同時多発的破局

それは宣戦布告という形を取らなかった。

だが、確実に「始まり」は訪れた。


四章と五章で積み重ねられた疑念、誤解、象徴の喪失、取り返しのつかない感情的損耗。それらが、ある瞬間を境に臨界を越えたのだ。

どの界も、同じ確信を抱いていた。


――先に撃ったのは、相手だ。


天使界と魔界の境界線では、聖律の光と魔相の闇が同時に炸裂した。

大聖環崩壊の報復を名目に進軍した天使界聖軍は、自らを「防衛側」だと疑わなかった。迎撃する魔界もまた、侵略を阻止しているに過ぎないと信じていた。


衝突の最前線は、もはや領土ではない。

境界そのものが軋み、割れ、崩れ落ちていく。

世界の縫い目が、戦場へと変わった。


霊界は声明を発した。

「霊界は中立を維持する」


だが侵入と干渉に対する即時殲滅型防衛は、他界の目には説明なき先制攻撃として映る。

最も理性的な界は、最も誤解される立場へと追い込まれていった。


獣界では、国境遮断による交易停止が飢餓を招き、生態系は虚界残滓の影響で歪み始めていた。

群獣の暴走は連鎖し、もはや獣界自身ですら制御できない。

暴走は国境を越え、被害は周辺界へ滲み出していく。


精霊界は、王女リィエル誘拐を理由に人間界へ制裁を宣言した。

精霊界の戦争は軍勢ではなく、嵐と枯死と地脈異常として現れる。

人間界にとって、それは交渉の余地なき自然災害だった。


人間界本部は、ついに決断する。

五界戦時体制への正式移行。

特務科と戦術科の前線投入準備。


その瞬間、人間界は中立調停者であることをやめた。


すべての界が、守るために戦っている。

だが結果として、世界は静かに、確実に分断されていった。


遠く、瓦礫と報告音の向こうで、夜宮は息を吐く。


「……始まってしまった」


誰に向けるでもなく、ただ事実を受け入れるように。


「もう、“止める”という選択肢は消えた」


世界は、戻れない地点を越えていた。

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