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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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66/111

北東支部、壊滅寸前 ――守る者たちの限界

侵入警報は、最後まで鳴らなかった。


支部深部――

本来なら複数の検知層と遮断結界を通過しなければ辿り着けない空間に、それらは最初から“存在していた”かのように現れた。


位相兵。


輪郭は曖昧で、実体と非実体の狭間を揺らぎ続けている。

通常兵器は弾かれ、魔術干渉はすり抜けられる。


戦術科の第一陣が、文字通り“触れられないまま”無力化された。


「攻撃が通らない……!」


「退け! 通常戦力じゃ――」


叫びは途中で途切れた。

位相がずれた刃が、存在そのものを削り取る。


警備部隊は善戦した。

だが、それは「遅らせただけ」だった。


霧亜は、初動対応の最中だった。


支部内マップが歪む。

敵数、侵入経路、被害状況――すべてが“辻褄の合う幻”に置き換えられていく。


「……幻操……!」


気づいた瞬間には遅かった。


視界が反転し、音が裏返る。

現実と虚像の境界が、意図的に曖昧にされる。


霧亜は最後に理解した。


――自分は、最初から狙われていた。


知性。

解析。

判断。


支部の“目”そのものを潰すために。


意識が暗転する。


「指揮権、私が取る!」


夜宮は前線に立った。


通信はすでに途切れかけていた。

後方からの支援も期待できない。


それでも、彼は逃げなかった。


「全隊、後退準備! 非戦闘員を――」


言葉の途中で、位相兵が夜宮の間合いに入った。


避けきれない。


直撃。


衝撃ではない。

“存在の一部が欠落する”感覚。


夜宮の身体が吹き飛び、床を転がる。


それでも、彼は立ち上がった。


肺に血が溜まり、視界が霞む。

それでも、指揮端末を握りしめる。


「撤退……命令……!」


声はかすれていたが、確かに届いた。


それが、北東支部における

最後の統制だった。


美香は、防御結界の中心にいた。


結晶化が、目に見えて進行している。

皮膚の一部が光を帯び、ひび割れる。


魔力出力は上がる。

比例するように、身体が悲鳴を上げる。


「……まだ……張れる……」


結界がなければ、全滅する。


わかっている。

だから、止められない。


健太郎が叫ぶ。


「美香! もう限界だ!」


「だめ……!」


結界が震える。

彼女の足元に、光の結晶が砕け散った。


健太郎は、特務科訓練で叩き込まれた動きを、初めて“実戦”で使っていた。


位相反転。

干渉点の一瞬を突く。


二体、撃退。


だが、息が上がる。

動きが鈍る。


囲まれている。


「くそ……!」


その瞬間、少年が前に出た。


「下がって!」


虚界由来の波形が、空間を歪ませる。


不安定。

危険。

暴走寸前。


だが――


健太郎の存在が、少年を繋ぎ止めていた。


「……大丈夫だ。ここにいる」


その言葉だけで、少年の力は、かろうじて“形”を保った。


だが、それは同時に。


少年が戦場の中心であることを、敵に示す行為でもあった。


篠原サクヤは、崩壊しつつある支部を見渡していた。


焦りはない。

怒りもない。


計画通りだ。


彼は静かに告げる。


「少年を渡せ」


「――あれは“鍵”だ」


殺す必要はない。

壊す必要もない。


確保する。


それが、教団と虚界計画の意志。


重傷の夜宮が、床に伏したまま、顔を上げた。


血に濡れた口で、それでも言う。


「……断る……!」


その一言で、夜宮はすべてと決別した。


本部とも。

教団とも。

篠原自身とも。


篠原は、ほんの一瞬だけ目を細めた。


「そうか」


そして、あっさりと撤退を命じた。


位相兵が霧散する。


目的は未達成。

だが、彼は満足していた。


「鍵は、いずれこちらに来る」


「世界が、そう動く」


北東支部は沈黙した。


中枢機能停止。

通信断絶。

指揮系統崩壊。


――事実上の壊滅。


救援は来ない。

五界戦争は目前。


そして、少年の存在価値は、完全に露呈した。


世界を壊す側にも、救う側にもなり得る“鍵”。


ここから先は――


誘拐。

選択。

そして、


「戦争か、虚界か」


その二択だけが残されていた。

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