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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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64/111

五界は互いを疑い始める ――信頼崩壊フェーズ

同時襲撃から半日も経たぬうちに、五界を覆ったのは怒りではなかった。

疑念だった。


それは目に見えず、だが確実に、境界よりも深いところに沈み込んでいく。


疑心暗鬼の連鎖


天使界は、崩れ落ちた光の塔の瓦礫を前に、即座に結論を出した。

魔界由来に“見える”魔紋。それだけで十分だった。


妖精界では、王女リィエルの不在が、王宮全体を凍らせていた。

転移術式の構文が人間界軍用規格に似ているという一点が、疑念を決定づける。


獣界は、群獣暴走の痕跡に残された思念干渉を霊界のものと断じた。

制御を失った森の怒りは、他界へ向けられる。


霊界は、思念管制塔の遮断を受けても説明しなかった。

沈黙は中立のつもりだったが、他界には逃避に見えた。


そして人間界は――

すべての界から、同時に視線を向けられていた。


誰一人として、「無関係だ」と言い切れない。

それが、この構図の完成度だった。


読者だけが知る真実


レゾナンス教団は、勝利宣言を出さない。

破壊を誇示もしない。


彼らの目的は、都市を焼くことでも、王を殺すことでもなかった。


恐怖。

怒り。

疑い。


それらが連鎖し、増幅し、

五界の境界振動を限界まで高めること。


戦争は目的ではない。

共鳴を起こすための条件にすぎない。


虚界残滓が、目覚めるための。


夜宮の理解


人間界本部、臨時指揮室。


壁一面に投影された各界の被害報告を前に、夜宮は黙り込んでいた。

破壊規模、タイミング、象徴性――すべてが、奇妙なほど揃っている。


夜宮

「……おかしい」


霧亜が視線を向ける。


夜宮

「どの界も“致命傷”は避けられている。

 これは復讐でも、制圧でもない」


夜宮は表示を切り替え、各事件の発生時刻を重ねる。


夜宮

「五界が、同時に疑心へ落ちるように設計されている」


霧亜

「教団は世界を壊しているんじゃない。

 世界が壊れる条件を満たしている」


沈黙が落ちる。


それは分析が終わった証拠だった。


局地衝突


答えが出るより早く、現実が動いた。


天使界前線で、魔界偵察隊と武装聖団が接触。

小規模な交戦。死者は出なかったが、銃口は向けられた。


妖精界では、人間界外交官が拘束される。

「安全確保」という名目で。


獣界国境では、越境者が無差別に排除され始める。


全面戦争ではない。

だが――戻れる線は、もう越えていた。


崩壊の静寂


各界は正式に戦時準備状態へ移行する。


人間界本部では、再封印計画が加速する。

倫理審査は省略され、手続きは“非常時規定”に置き換えられた。


レゾナンス教団は、姿を消した。

役目を終えたかのように。


夜宮(内心)

(止められる者がいるとしたら……

 虚界を“理解してしまった側”だけだ)


健太郎。

そして、少年。


二人はまだ知らない。

自分たちが、世界を壊す側にも、救う側にもなり得る位置に立っていることを。


次に教団が狙うのは、

虚界を顕在化させる共鳴点。


それは――

健太郎が訓練中、夢で見た

**“境界の底”**と、完全に一致していた。

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