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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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63/111

四界(五界)同時襲撃 ――完璧に計算された混乱

五界合同会議が解散してから、三日も経っていなかった。


各界の代表団はそれぞれの帰路につき、連絡網は一時的に緩み、警戒は「次の会議」へ向けた政治的整理に傾いていた。

その隙を――待っていたかのように。


天使界・大聖環


光の塔は、崩れるはずのない象徴だった。


裁定、信仰、軍令。

天使界の秩序すべてを束ねる中枢が、朝の祈祷が始まる直前、内側から軋み始めた。


「――魔紋反応!?」


基部に浮かび上がったのは、魔界由来とされる腐蝕紋様。

だが次の瞬間、それは腐食ではなく共鳴だと判明する。


境界そのものが、音叉のように震え、

光の塔は自らの構造に耐えきれず、崩壊した。


瓦礫と光が降り注ぐ中、上層評議会は即断する。


「魔界の報復だ」


検証も対話もなかった。

武装聖団の動員命令が発令され、天使界は戦時体制へと舵を切る。


妖精界・王宮


結界は破られていなかった。


それが、妖精界にとって最も不気味だった。


王宮中枢、王女リィエルの私室に転移陣が静かに開く。

刻まれた構文は、人間界軍用転移術式と酷似していた。


「――人間界が、ここまで……?」


抵抗の痕跡はほとんどなく、

王女は“奪われた”のではなく、消えた。


調停者であり、和平の象徴。

その存在が欠けた瞬間、評議会は空白に沈む。


「抗議文を出せ。断交準備も同時に」


中立派は声を上げられなかった。

疑念が、先に広がったからだ。


獣界・中央森域


獣王の咆哮が、森を揺らした。


精神制御ネットワークが寸断され、

群獣は命令を失ったまま暴走を始める。


残された痕跡は、霊界式の思念干渉痕。

だが実際には、そこに異質な残滓が混じっていた。


虚界の欠片。

制御という概念そのものを拒絶する波動。


「……他界の仕業だ」


獣界は即座に防衛優先を決定。

国境結界が強化され、他界との往来は遮断される。


森は守られた。

だが同時に、世界から閉ざされた。


霊界・思念管制塔


破壊音は、なかった。


塔は無傷で、構造にも異常はない。

それでも、思念通信はすべて沈黙した。


刻まれていたのは、天使界式の聖律封印に酷似した痕跡。


「我々ではない」


霊界は説明を拒み、外部への発信を止める。


沈黙は、防御だった。

だが他界には――罪に見えた。


人間界・本部


最後に、音が途切れた。


暗号回線が次々と遮断され、

指揮系統は瞬時に分断される。


特務科、戦術科、医療科。

それぞれが独立判断を迫られ、統制は崩れる。


だが――


裏回廊は無傷だった。

再封印計画の中枢も、影響を受けていない。


「……潰す気はないな」


誰かが呟いた。


レゾナンス教団は、本部を破壊しなかった。

必要なのは混乱であり、破滅ではない。


五界すべてに残されたのは、

他界を疑うための証拠だけだった。


名乗る者はいない。

声明もない。


あるのは、同時に起きた“誤解”だけ。


世界は、音を立てずに分断されていった。

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