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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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56/111

会議の崩壊

魔界代表ヴァルトの暗殺から一夜。

 アーカ・ドームの空気は、もはや外交会議のものではなかった。


 五界の代表団は、それぞれ別方向へ“退路”を確保し始めている。

 会議場に満ちるのは、魔力と霊圧と武装の気配——

 もはや国家間会議というより、ひとつの戦場の前夜だった。


■帰還準備という名の“軍備”


 魔界代表団の老将グラズが、壇上に立つと同時に宣言した。


「我らは即刻帰還する!

 そして境界方面軍を再編する!

 精霊界の挑発は看過できん!」


 その声に、精霊界側の高位精霊が鋭く反応する。


「挑発した覚えはない。

 だが——魔界の暴走が続くなら、こちらも“結界軍”を動員せざるを得ない」


 獣界代表ラルガは、両者の会話を聞きながら静かに席を立つ。


「どちらが正しいかより、我らにとって重要なのは被害だ。

 群獣暴走の責任を追及し続ける。

 ……国境結界は今夜から強化する」


 霊界は最後まで沈黙の姿勢を崩さなかった。

 ただ、彼らは音もなく撤収を始め、霧のように会議室から薄れていく。

 その退き際の静謐こそが、他界に最も深い不安を刻む。


■人間界議長の“中断”


 議長台に立つ宗主ハーデンは、騒然とする会場を前に、あくまで冷誠な声を保っていた。


「……これ以上の議論は、不毛だ。

 本日はこれにて、中断とする。」


 その言葉は、会議室の緊張を解くどころか——

 むしろ、五界が一斉に戦争準備へ移行するための“解禁宣言”になった。


 各界の代表たちは、ほぼ同時に立ち上がる。

 その動きは、去るのではない。

 “戻って備える”動きだった。


 アーカ・ドームの中央に設置された境界震度計が、低く唸るような音を立てた。

 誰の魔力でもない。

 五界が一斉に動き始めた時に起こる、世界規模の“揺らぎ”だった。


■夜宮と霧亜の静かな結論


 席に残った夜宮が、霧亜の方へ身を寄せ、低く呟く。


「……終わったな。

 もう各界は、互いを信じなくなる。

 ここから先は、総力戦の準備だ」


 霧亜は、ドームの天蓋に浮かぶ揺らいだ光を見上げる。


「暗殺は前座。

 真正の狙いは、五界の“連携”そのものの破壊……」


 静かに息を吸う。


「誰かが、五界すべてを“戦わせたい”。

 そしてそのための布石は、もう十分に撒かれてしまった」


 会議が崩壊する音は、叫びではなく沈黙の形をしていた。

 アーカ・ドームを去っていく代表団たちの背に、戦争の影がつきまとい始める。


 ——世界は、確実に次の段階へ動き出していた。

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