表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/111

小規模戦闘 — 二人の連携戦闘の初披露

河川敷に夜風が流れ、背丈の低い草がざわりと揺れた。魔力光を含んだ風は淡く青い燐光をまとい、その中を、小さな影がいくつも弾丸のように走り抜ける。

 散開した妖精族――フェアレットたちだ。虹膜の発光が加速し、警戒と敵意が露わになる。


「来るよ、健太郎くん」

「分かってる」


 会話は短い。呼吸の一致は、もはや癖に近い。


 一体が先陣を切った。羽ばたきが音の壁を破り、鋭い“針”が空気を裂く。

 健太郎は一歩踏み込み、上半身をしならせる。針が頬をかすめ、火花のような魔力飛沫が散る。しかし彼の皮膚には、赤い線すら残らなかった。


(……やっぱり、普通じゃない耐性だよな)


 その余裕を思考に割きながら、健太郎は反撃に移る。

 拳が、小さく呼吸する。訓練場で叩き込まれた動作――


「衝断」


 名を呼ぶより早く、圧縮された衝撃が解き放たれる。拳が触れる直前、空気の層を割り、妖精の小さな体を弾き飛ばした。

 フェアレットは小さな悲鳴を上げ、地面を転がる。


 その背後で、美香が短杖を掲げる。銀糸のような魔力紋が足元に展開し、風が渦を巻いた。


「――風縛ウィンド・バインド!」


 透明な風の帯が巻き上がり、三体のフェアレットを一斉に絡め取る。暴れるほど絡みつき、動きを奪う拘束術。

 美香は表情をほとんど動かさない。精密な制御のため、視線だけで風の流れを誘導していく。


「ナイス」

「そっちもね。前衛の仕事、完璧だよ」


 互いに言い切るより前に、新たな影が頭上から急降下してきた。リーダー格の個体だ。羽の光度が強く、体表の紋が濃い。


「健太郎くん、気をつけて。あれ、少し強い」


「分かった。こいつで終わりだ」


 リーダー格のフェアレットが、束ねた針を放つ。光の筋が扇状に広がり、避け場を奪う。

 健太郎は地面を蹴り、前へ。回避ではなく、踏み込み。針の大半を腕で払う。払われた針は魔力を散らして砕け、煙のように消えた。


 そのまま距離を詰め――


「っし!」


 短く息を吐き、肩の回転を乗せて拳を放つ。

 直撃を受けたフェアレットが地面に叩きつけられ、羽を震わせながら動かなくなった。


 戦いの流れが完全に二人へ傾く。

 美香は拘束魔術を強め、逃げ場を与えずに次々と捕縛していく。


 ――ただ、一体だけ。

 捕縛の隙間をすり抜け、上空へ逃げ上がる影があった。


「逃がす……!」

 健太郎が跳ぼうとした瞬間、


 弓弦の音が夜を裂いた。

 細い矢が一直線に飛び、妖精の進路を“寸分の狂いなく”塞ぐ。


 フェアレットは急停止し、恐怖で震えたまま墜落する。針一本傷つけることなく、退路だけを断つ精密な射撃。


「ふたりとも、お疲れ。後処理はこっちで引き取る」


 草むらの影から現れたのは、カムイ支部所属のガーディアン――椿霧亜。

 長い黒髪を指先で払いつつ、静かに弓を下ろす。


 その歩みに合わせ、夜風が揺れた。

 河川敷に残った魔力光は消え、ただ戦闘の余韻だけが漂っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ