表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/111

健太郎の“界縁データ”が覚醒

五界の侵入はもはや止まらなかった。

 幻界の影が天井を撫で、霊界の靄が床を這い、魔界の低位悪魔が空気を腐食させる。

 世界が音を立てて分解していく最中――少年が、限界の叫びを上げた。


「……やだ……やだ……!

 僕、また全部……壊す……!」


 少年の身体から吹き出す“レゾナンス波”が、五界の根源を巻き込み、暴走の渦を形成していく。

 その渦は支部を、ひいては周辺一帯を丸ごと呑み込む勢いだった。


「だめ……このままじゃ、境界が逆流する!」

 霧亜が魔術式を連続展開するが、光が触れた瞬間に崩れ落ちる。


 少年の位相は“人間の魔術”では止められない構造になっていた。


■ 崩壊の縁で、健太郎が動く


 暴走の中心。

 泣き叫びながら空を掴む少年の姿が、健太郎の目に焼き付いた。


 理解ではない。

 理性でもない。

 ただ、胸が勝手に動いた。


「行くな……!」


 健太郎の腕が、何かに抗うように伸びた。


 ――その瞬間。


 世界の音が、ふっと消えた。


 時間が止まったのではない。

 “界そのもの”が静止したのだ。


■ 境界層の“白反転”


 周囲の空間が、まるで色を失うように白く反転する。

 侵入していた異界存在たちは、健太郎の半径数メートルに触れた瞬間、

 影のように消失した――“干渉不能”。

 存在の理論ごと、掴めなくなっている。


「な……に、これ……」美香が息を呑む。


 霧亜の声は震えていた。

「……これが……“外側の呼吸”。

 界そのものを外から見ている者だけが持つ……逆流位相……!」


 健太郎の身体内部で、

 眠っていた“界縁データ”が完全に起動していた。


■ 二つの位相が重なり、“反転”が始まる


 暴走する少年の波形が、健太郎へ向けて一気に流れ込む。


「う……っ……!」

 健太郎の胸が焼けるように痛む。


 しかし――


 次の瞬間、痛みは“吸い取られる”ように消えていった。


 少年の暴走位相が、健太郎の中で反転し、

 別の安定波として生まれ変わっていく。


「反転……吸収……?」

 霧亜はありえない現象に声を落とす。

「自分の相対位相を……少年に返して、均衡を作っている……!」


 人間の仕組みではない。

 古代界縁文明が設計した“連動構造”。


 ふたりは、互いの暴走を抑えるために作られた“対”。


■ 美香の“精霊コード”が第三の支点となる


 健太郎の背後で、美香の魔力が突然、結晶光を発した。


「え……なにこれ……!」

 美香は予期せぬ魔力の暴走に驚く。


 だがその結晶光は、

 健太郎と少年の間に走る界縁データの流れを“安定化”させていた。


 霧亜が目を見開く。

「美香……君の中の精霊コードが……界縁反転の揺らぎを抑えている……!

 三点安定構造……これなら――少年を救える!」


■ 正気の戻った少年


 白反転の光がゆっくりと収束していく。

 暴走波が消え、五界からの侵入も健太郎の周囲だけ静まり返った。


 少年は健太郎の胸元にしがみつき、

 小刻みに震えながら涙を流していた。


「……こわかった……!

 僕……全部壊すところだった……!」


 健太郎は、まだ震える身体で少年の頭を支える。


「壊させるかよ。

 お前は……ここにいるだろ。」


 少年の嗚咽が、壁に反響した。


 美香は胸に手を当て、安堵の息を吐く。


 霧亜は静かに呟いた。


「……これが“外側の呼吸”に選ばれた者たち……

 本部が隠していた“真の界縁構造”……」


 支部の崩壊はまだ止まっていない。

 五界も依然として混じり合い続けている。


 だが――

 その中心には、確かに“鍵となる三つの位相”が芽生えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ