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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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44/111

事件発生 ― 境界破壊の瞬間

 深夜零時。

 北東支部の境界監視網が、突然、全階層で赤色警報を点灯させた。


 甲高いアラートが、まるで絶叫するように支部全体へと走る。


「警戒レベルα――境界異常、極値!」

「観測値、上昇を停止しません!」


 夜勤隊員たちが慌ただしくコンソールに詰め寄り、次々に異常を告げる。


 その中心、境界観測室。

 霧亜は、モニターに浮かぶ五つの巨大波形を前に、蒼白になっていた。


「……五界の“外郭膜”が破れました。

 同時です――五つ全部!」


 室内にいた者たちの時間が、一瞬、凍った。


 ありえない。


 通常、一界の外郭膜が破れれば、それは国家レベルの危機だ。

 五界同時など、理論上、世界の破滅級――起こり得るはずがなかった。


 だが、波形は現実だ。

 五つのリミットラインが、同時に真っ赤に跳ね上がり、その上で崩壊音のような電子ノイズを立てる。


「……来ます!」

 観測班の叫びの直後、支部周辺の空間がひび割れた。


 視界に映らないガラスが砕けたような、乾いた破砕音。

 同時に、五つの異界から“侵入”が押し寄せた。


■ 幻界より――錯視生命の群れ


 色も質量も定まらない“形の幻”。

 見る者の脳そのものを欺き、ありもしない斬撃を与える擬似存在。


■ 霊界より――半物質の思念体


 空気と壁の区別なく漂う、冷たい残響。

 意志を持たず、ただ接触した精神を削る霊的ノイズ。


■ 獣界より――異形化した群獣


 大地の向こうから吠え声が重なる。

 骨格が人の概念から逸脱した“獣性の塊”が夜の森を踏み抜く。


■ 精界より――結晶構造の魔力体


 光を屈折させながら浮遊する、硬質の魔力結晶。

 触れれば皮膚を裂き、魔力回路を灼く。


■ 魔界より――低位悪魔の漂流群


 理性のかけらもない、小悪魔の塊。

 その影が地面を溶かすように蠢く。


 北東支部は、完全に包囲された。

 結界壁が軋んだ音を立て、フロアが震える。


「境界外殻、消失……ここはもう、五界の“接続点”になっています!」

「支援要請を送信……通信が……!」


 通信オペレーターの手が止まる。


「……本部回線、切断。

 全域ブラックアウトです!」


 その言葉は、支部全体に重く沈んだ。


「本部は……切ったのか……!」

 夜宮が、喉の奥で噛みしめるように呟く。


 怒りではない。

 絶望でもない。

 だが、その声には深い確信が宿っていた。


 北東支部は、見捨てられた。


「全戦闘班――配置につけ!」

 夜宮が吠える。


「五界同時侵入だ。

 援軍は来ない。

 我々が守らねば、この地域ごと破壊される!」


 境界線の向こうから、五つの異界の影が波のようにうねる。


 そして――第一部の大事件が幕を開けた。

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