美香の“精霊族コード”発覚
● 測定結果
・美香の魔力核に、精霊族の古い“コード片”が混在
・これは大昔に滅びた精霊文明が遺した量子情報断片
・本来、混血でもない人間に宿ることは起こりえない
霧亜
「君の魔力……精霊族の“旧言語”が混じっている。」
美香は動揺。
健太郎は慰めるが、美香は「なぜ自分だけが“ヒトでない”のか」混乱する。
伏線:
・美香のコード片は、少年の“リヴァース因子”と干渉すると界縁安定に寄与
・美香自身が第二部で重要なリンク役となる 小説化
第6章・S2 美香の“精霊族コード”発覚
小説化
任命式が終わった後も、誓約ホールの冷たい空気は美香の肌に残っていた。
霧亜は式典の余韻を引きずることなく、美香に声をかける。
「美香。念のため、魔力核の再検査を行うわ。ついてきて。」
「え……あ、はい。」
健太郎は心配そうに二人を追う。霧亜はそれを咎めることもなく、軽く頷いた。
「健太郎。あなたも来なさい。今回の結果は君にも関わる。」
薄い照明だけが灯る廊下を抜け、三人は“魔力測定室”に入った。
ここは支部内でも数少ない、旧文明の残滓を応用した高精度解析装置が並ぶ場所だ。
美香が測定台に乗ると、透明な魔導膜がゆっくりと閉じ、美香の全身を走査するように光が流れた。
数秒後、解析モニターの文字情報が急激に揺れ始める。
「……これは。」
霧亜の声に、健太郎は思わず前のめりに画面を覗き込む。
「霧亜さん、どうしたんですか?」
霧亜はわずかに息を呑んだ。彼女の表情に見慣れない影が落ちる。
「美香……君の魔力核に、異常がある。」
「え……?」
「“旧言語コード(オールドコード)”。精霊族文明の量子情報片よ。」
美香の体が震える。
「精霊族……? でも私は……普通の人間で……混血でもなくて……」
「本来なら、絶対に起こらないこと。」
霧亜は言葉を選びながら続ける。
「精霊族文明はとっくに滅んでいるし、遺伝的に残るはずのない“情報片”が、君の魔力核に入り込んでいる。」
健太郎は、美香が測定台にすがりつくように肩を落とすのを見て、胸が締め付けられた。
「美香、大丈夫だよ。どこから来たものでも、君は君だ。」
しかし美香は首を振る。
「違うの。……私、ずっと普通でいたかった。
どうして私だけ“ヒトでないもの”を持ってるの……?
どうして……」
声が震え、涙が滲む。
健太郎はそっと彼女の肩に手を置いた。
「ヒトかどうかなんて関係ない。俺たちは一緒にやってきたし、これからも――」
「でも健ちゃんは……普通の人間じゃないにしても、ちゃんと“自分のもの”として力があるじゃない。
私は……知らない誰かの残骸を抱えてるだけ……。」
それは、幼いころから魔力に不安定さを抱えてきた美香の、最も深い恐れだった。
霧亜は、美香の前に片膝をつき、真正面から目を見る。
「美香。これは呪いでも異物でもない。
“コード片”は確かに古い精霊族文明のものだけど……君の魔力と融合して安定している。
君が奪われているわけじゃない。」
「……ほんとに……?」
「ええ。それに――」
霧亜は測定結果の別データを指差した。
「この“旧言語コード”は、少年の持つ“リヴァース因子”と干渉すると、界縁を安定させる方向に働く。
つまり君は、生得的に“境界の安定者”となれる素質を持っている。」
「私が……?」
「そう。偶然では説明できない、非常に希少な構造よ。」
美香は驚き、そして少しだけ怯えを混ぜつつも、その言葉を聞いて静かに息を吸った。
健太郎は彼女の隣で、しっかりと支えるように立っている。
「美香。もし君がどんな秘密を持ってても、俺たちはチームだよ。」
美香の瞳が揺れ、ほんのわずかに笑みが戻る。
「……うん。ありがとう、健ちゃん。」
測定室のモニターには、かすかに光を宿した“古い語りの断片”が脈打っていた。
それは、美香が後に“境界をつなぐ鍵”となることを、静かに示していた。




