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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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37/111

少年が現れる(教団に追われて)

夜の山間地帯。

朽ちかけた鳥居と、苔の吸い付く石段――

地元ではすでに忘れ去られた廃神社が、冷えた闇の中に沈んでいた。


健太郎、霧亜、美香の三人は、

教団レゾナンスの痕跡を追って、この神社跡を調査していた。


美香が結界感知の装置を手にして呟く。


「……ここ、魔力が濃い。

 まるで誰かが“逃げ込んだ”みたいな痕跡がある……。」


霧亜は刀の柄に指を添えたまま周囲を見渡す。


「気配が乱れている。まだ近くに――」


その瞬間だった。


茂みをかき分ける音。

否、駆け下りてくる足音。

それは焦燥と恐怖をまとった速さだった。


鳥居の影から、少年が飛び出してきた。


痩せた体。白く、透明めいた髪。

年齢は健太郎より少し下だろう。

荒い呼吸で胸を押さえ、瞳だけがぎらぎらと生きている。


「た……助け……て……

 追われてる……!」


声はかすれていたが、切実だった。


美香が息を呑む。


「この子……界縁反応が、強い……!」


霧亜が即座に健太郎を庇う位置を取る。


「落ち着いて。誰に追われているの?」


少年は言葉にならない声で背後を振り返った。


そのとき――

空気がねじ切れるような振動が、廃神社を貫いた。


月の光を受けて木々の影が揺れ、

そこから複数の“黒い影”が歩み出てくる。


レゾナント。

境界粒子を無理やり注入された強化人間。


彼らは静かに、しかし確実に少年を見据えた。


そして、もう一人――健太郎にも。


霧亜が刀を抜き放つ。


「完全に狙われてる……!

 散開して――」


言い終わる前だった。


レゾナントの一体が、健太郎を捉えた瞬間。

空気が、弾けた。


「……っ?」


健太郎の視界の端で、世界がわずかに歪む。

地面が遠く見え、木々の影が流動する。


界縁粒子――

彼自身も制御できない光が、健太郎の体表から立ちのぼっていた。


淡い光の粒子が風のように舞い、

周囲の空間だけが凪のように安定していく。


美香の結界が暴発寸前で膨らむ。


「だめ……!魔力が、制御でき……――」


霧亜が振り向く。


「美香、落ち着け!結界を絞れ――!」


しかし、美香の魔力は界縁粒子の影響を受け、暴れ出す。

結界の網が膨張し、廃神社の石柱に光のひびを広げる。


それでも、健太郎の周囲だけは――

まるで“嵐の中心”のように静かだった。


そして、異変はさらに起こる。


少年が、健太郎を見た瞬間。

その荒れ狂っていた界縁の波が、嘘のように沈静化した。


少年の瞳に驚愕が浮かぶ。


「……君……。

 同じ……なの……?」


健太郎は息を呑む。


「同じ……?」


少年は震える手を伸ばす。

指先が、健太郎の界縁粒子の光へ触れようとした瞬間――


光が共鳴し合うように揺れた。


美香が息を呑む。


「これ……属性反応が……ゼロ?

 二人とも……“無属性”のまま……融合してる……」


霧亜が顔をしかめる。


「界縁の“根源適性”……。

 この子、そして健太郎君……

 同じ因子を持っている……?」


レゾナントたちが二人の共鳴を“標的の確定”と見なし、動き始める。


夜の廃神社に、無音の殺意が満ちた。


健太郎と少年――

二人の“属性の無さ”が、破壊と創造の境界を揺らす共鳴の核となることを、

この場にいる誰もまだ知らなかった。

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