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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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35/111

標的は「少年」と「健太郎」

戦略分析室のモニター群が、淡い青光を壁に散らしていた。

空気には、どこか金属めいた緊張が漂っている。


相沢班長が指先で画面を切り替える。

悪魔族侵入者ハルマ・サークの行動ログが立体投影で浮かびあがった。


「侵入個体の追跡解析ですが……どうにも気になる軌跡がありまして」


夜宮が顎に手を置く。

霧亜は腕を組んだまま、やや身を乗り出した。


相沢は画面に赤い点を示す。


「この地点。ハルマ・サークは、襲撃以前に何者かと接触しています。

 相手の識別コードは……《レゾナンス》」


霧亜の表情が凍る。


「……教団と? 悪魔族が?」


「密約です。」

相沢の声は淡々としていたが、室内の温度がわずかに下がったように感じられた。


画面が切り替わる。そこには一本の契約文が翻訳付きで表示される。


――『界縁由来存在(少年)を引き渡すこと』

――『対価として、界縁技術の断片を提供する』


美香が息を呑んだ。


霧亜は唇を強く噛みしめる。

「少年は……儀式に使われるのですね?」


夜宮が視線を落とし、短く答える。


「おそらく。五界の壁を破壊する“触媒”として。

 界縁存在そのものが境界を揺らす素材になる」


その言葉は刃物のように鋭かったが、感情は抑え込まれていた。


相沢が続ける。


「問題は、標的がもう一人いたことです。」


画面に新たなデータが浮かぶ。解析波形と、生体感応値のグラフ。

“第二標的:天城健太郎”


美香の肩が小さく震えた。

「ど、どうして……? どうして健ちゃんまで……?」


相沢はためらいなく説明した。


「境界干渉波への“異常に高い感応値”が検出されています。

 少年と天城君の反応パターンは、同質と判断されたようです。」


霧亜が振り向き、夜宮を見る。


「……夜宮支部長。健太郎君は、まさか……?」


夜宮は表情を動かさない。だが、わずかに目を閉じた。


「界縁の反応者である可能性は高い。

 本人は無自覚だろうが、教団にとっては“価値”にも“危険性”にもなる。」


室内が静まる。


誰もが、その意味するところを理解していた。


境界を揺るがす触媒が二つ。

一つは少年。

もう一つは――何も知らない、ただの少年であるはずの天城健太郎。


美香が小さく呟いた。

それは祈りにも似た声だった。


「……守らなきゃ。絶対に。」


夜宮はゆっくりと頷く。


「そのために、我々がいる。」


しかし彼の胸中では、別の思考が密かに動いていた。


――健太郎の“覚醒値”の上昇が、本部に察知される前に手を打たねばならない。

――教団レゾナンスだけが敵ではない。


その予感だけが、静かに冷たく膨れ続けていた。

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