教団《レゾナンス》とは何か
北東支部・戦略分析室。
窓の外では明け切らない空が薄青く揺れ、モニターの光だけが室内を照らしていた。
相沢が操作する解析端末から、断続的にノイズ混じりの音が流れる。
前章の悪魔族襲撃で発生した裂け目のデータだ。
彼は眉間に深い皺を刻みながら、周波数のグラフを拡大した。
「……やはり混ざってますね。人工干渉波です。」
夜宮が静かに腕を組む。
「裂け目の揺らぎは自然発生のものじゃない。
誰かが……境界を意図的に“叩いた”。」
美香が息をのむ。
「つまり、人間側でそんなことを……?」
夜宮の声は低く、乾いた。
「ガーディアンに、こんな周波数を出せる装置は存在しない。
となると――“境界干渉者”が動いたと考えるべきだ。」
霧亜が表情を硬くする。
「まさか……教団が?」
相沢が頷き、別のファイルを投影した。
そこには複数の異界文字と、破壊された祭壇の写真が映し出される。
「《レゾナンス》――五界の融合、すなわち“崩壊”を信仰する集団。
人間、魔族、他界出身者が混ざり合い、境界そのものを神とみなす……異常な思想集団です。」
彼らの教義の一部がスクリーンに流れる。
『境界は生命。
壁は牢獄。
五界はひとつに戻らねばならぬ。』
霧亜は不快そうに眉をひそめた。
「……本部が摘発したはずじゃ?」
相沢は苦い顔をした。
「壊滅した、と発表されました。
しかし幹部クラスは捕まっていない。
残党は世界中に散って潜伏し、
境界技術の破壊実験を続けているとの情報があります。」
夜宮はモニターを見つめたまま、低く呟く。
「……そして噂だが。
《レゾナンス》内部には、“本部と協力関係にある人物”が潜んでいると言われている。」
室内の空気が一気に冷える。
美香が震えた声で言う。
「本部と……?
どうしてそんな……」
夜宮は答えなかった。
ただ、ゆっくりとモニターに映る裂け目の映像を閉じた。
「理由はわからない。
だが、境界を揺らす者が再び現れた。
今回の悪魔族襲撃は……その“予告”にすぎない。」
霧亜と美香の視線が交わる。
健太郎の背後に、また別の影が迫り始めている――そう直感させる会話だった。
場の静寂の中、夜宮は静かに言い切った。
「《レゾナンス》が動き出した。
……我々も覚悟を決める必要がある。」




