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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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30/111

小規模衝突と美香の異常兆候

中位悪魔が影を引き裂くように飛び出し、前衛隊員たちへ牙を剥いた。

衝突の衝撃が舗装路を砕き、粉じんが舞い上がる。


「前衛、下がれ! 霧亜先輩、右から──」

健太郎が叫ぶより早く、霧亜は飛び込んで悪魔の腕を刎ね飛ばす。

しかし周囲の空気はすでに異界化し、足場がふわりと浮くように不安定だ。


その混乱の渦中──

美香の放つ結界陣が、突然、破裂するように膨張した。


「……え、ちょっ……待って……っ!」

美香の指先が震える。結界の光が糸の網のように街路樹を絡め取り、建物の壁面を包み込む。

本来固定されるはずの結界が、怒りのように脈動していた。


霧亜が振り返って叫ぶ。

「美香! 制御を戻して!」


「無理っ……外の魔力濃度が強すぎ……っ、勝手に流れ込んで……!」

美香の魔力と、異界化した街の魔力が共鳴し、暴走の渦が広がる。


膨張した結界が、前衛の隊員たちを呑み込もうとした瞬間——


健太郎が一歩、踏み出した。


空気が、静まった。

結界光の網が彼の半径数メートルだけ避けるように歪み、波が引くように沈静化する。


美香は目を見開く。

「……なんで? 結界が……健ちゃんを避けて……」


霧亜も息を呑んだ。

健太郎の足元だけ、異界化のゆらぎが完全に消えていた。


「まさか……あなたの“界縁反応”……」

霧亜の声は震えていた。


「俺、何もしてない。ただ近づいただけで——」


健太郎は混乱したまま拳を握る。

しかしその周囲だけ、空間が正常化していく。まるで彼が“世界の境界”に干渉して、均衡を作り直しているかのように。


一方、美香は胸を押さえてうずくまった。

魔力が逆流し、体の内側が灼けるように熱い。


「……これ、ダメ……このままじゃ……暴走する……」


霧亜は美香に駆け寄り、即座に補助符を展開するが、暴走の根源は外ではなく美香自身の潜在因子だった。


健太郎の体内では、別の“値”が急激に変動していた。

本部の計測器が甲高い警告音を鳴らす。


《対界適応値:規格外領域に突入》


霧亜は健太郎を見据える。

「……健太郎。あなたは、ただの観測補助じゃない」


その言葉は、戦場の騒音に沈むことなく、確かな重みをもって響いた。

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