異常ゲート発生
朝の神流市中心部、山間地帯の谷間には、霧が低く垂れ込めていた。普段なら穏やかな住宅街のはずが、今朝の景色はどこか異質だった。建物の輪郭は微かに揺れ、街灯や道路標識の光は二重に見える。空気そのものがわずかにうねり、呼吸するだけで肌に微細な圧迫感を感じる。局地的に、街の一角が半ば異界化しているかのようだった。
北東支部の緊急管制室では、夜宮レイジが端末に向かって静かに数字を追っていた。潜在ゲートの鼓動が加速し、局地的域圧が危険なほど不安定になっている。
「ゲート鼓動、レベル4。局地的域圧不安定。観測補助を付けて出動する」
端末の青白い光が夜宮の顔を冷たく照らす。支部員たちは緊張で身を固め、命令に従う準備を整えた。
健太郎はリュックを肩に背負い、観測補助として同行するための装備を整える。表情は落ち着いているが、心の奥で小さくざわめくものを感じていた。近づくと、ゲートの鼓動が自分の存在に反応していることを、まだ自覚していない。
隣で美香も端末を操作しており、彼女の潜在因子がわずかにゲートの波動に共鳴している。画面の波形は微かに赤く揺れ、何かが「探している」かのように異界の気配を示していた。
谷間に立ち込める霧の中、健太郎と美香、そして夜宮の三人は、静かに出動の準備を整えた。街の輪郭が揺れる度に、これから起こる異常事態の予兆が、彼らの胸をざわつかせた。




