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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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24/111

界縁反応の“初覚醒”

ゲート内部は、もはや“空間”という言葉では足りなかった。

光の薄膜が層をなし、奥行きは深淵のように複雑に折り重なり、

ここが五界のどれにも属さない“隙間”であることを直感で理解させた。


その中央に、少年が立っていた。


足元の地面があるようで、ない。

影もないのに、存在だけが異様にくっきり浮かび上がっている。


少年

「やっと来たね」


健太郎と霧亜、美香が足を止めた瞬間、少年はゆっくり首を傾けた。

その視線は、獲物ではなく“答え”を凝視するようだった。


少年

「君、ずっと“こちら側”の匂いがしてた」


健太郎

「は……? 匂いって、どういう……」


だが次の瞬間、世界がきしんだ。


薄いガラス板を踏み抜くような音が、空間全体から響く。


視界が白く揺れ——輪郭が二重に割れた。

木々の影、光の曲線、霧亜の瞳、少年の輪郭——

すべてが、二枚の透明な膜のようにズレて見える。


空気の中を、ざらつく粒が流れていく。

それは光でも霧でもなく“意味を持たない粒子”のようだった。


霧亜

「……健太郎? 何が起きて……?」


健太郎は何も答えられなかった。

言葉を発そうとすると、声より先に“音にならない振動”が漏れた。


次に——音が聞こえた。


魔力の流れが“音”として聞こえる。

ゲートの鼓動が“脈拍”として胸に同期してくる。


時間が、一瞬だけ。

滑るように、途切れた。


世界の線がほどけていくようだった。


美香

「健ちゃん……体が……!」


健太郎の体表から、細かな光の粉が舞い上がる。

界縁粒子——本来、ゲートの最深部にしか存在しないはずの物質。


まるで健太郎自身が、ゲートと同じ周波を発し始めているかのようだ。


少年は、それを見て微笑んだ。


少年

「ね。本当に、似てるよ。

 君も“ここに属してない”」


健太郎

「……やめろ。

 俺は、人間だ。

 人間で——いたいんだ!」


少年は静かに首を振る。


少年

「違うよ。君は——」


その言葉は最後まで届かなかった。


ゲート全体が、爆ぜた。


光が反転し、鼓動が悲鳴に変わり、

空間が閉じるというより“潰れた”。


少年の姿が、光の奥へと引きずられる。


霧亜

「待って——!」


手を伸ばした瞬間、霧亜の腕も輪郭がゆらめくほどの衝撃が走った。


少年は振り返らなかった。

ただ最後に残した言葉だけが、空間にこだました。


——“またすぐに会えるよ。だって——”


その響きも、世界に吸われて消えた。


次の瞬間、白光が走り、

健太郎の視界は闇に落ちた。


霧亜

「健太郎っ——!」


美香

「健ちゃん、目を開けてっ!!」


ゲートは完全に消滅し、

健太郎は、霧亜の腕の中で静かに意識を失った。

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