本部研究施設内で異常
ガーディアン本部・地下第七収容区画。
厚い結界壁と多重封鎖の自動扉が、無機質な音だけを反響させる冷たいエリア。
そこに、“無属性の少年”は収容されていた。
白い空間。
ベッドとテーブルが一つあるだけの簡素な部屋。
だが、その全てには最新の封印術式と防魔構造が組み込まれている。
通常なら、どんな異界存在であっても脱出は不可能だ。
……はずだった。
監視員A
「……あれ? 少年の反応値、またゼロになってる。
いや、さっきまでゼロじゃない“何か”が――」
監視員B
「何度言えば分かる。奴は“反応ゼロが通常値”だ。
今見えてる波形はノイズだよ」
二人が画面に顔を寄せる。
そこに映った少年は、ベッドの端に座り、壁の一点をじっと見つめていた。
その視線は、まるで空間の向こう側に何かを“感じ取って”いるかのようだった。
監視員A
「なんだ……? あの目。こんなの、さっきまで――」
その瞬間。
少年が、ぽつりと呟いた。
「——呼ばれたから、行く」
監視記録が一瞬ノイズで塗りつぶされる。
次のフレームで――
少年の姿が消えていた。
扉は閉じたまま、封印も作動状態、術式異常もゼロ。
物理的にも魔術的にも“出られるはずがない”。
だが、少年はそこにいなかった。
監視員B
「……は? 転移の痕跡なし……?
どうやって……消えた……?」
監視員Aは震える声で叫ぶ。
「本部緊急コード! 収容対象消失! 消失だ!!」
だが、本当の異常はそこから数秒後に起きた。
本部全体の警報が赤に染まる。
《北東支部近郊の潜在ゲート、活性度が急上昇》
《界縁波形が“少年と同一周波”を検出》
《ゲート側からの引力反応——異常強度!!》
研究主任
「……少年が、吸われた? そんな馬鹿な……」
主任は自分の口から出た言葉に、自分で青ざめる。
「ゲートが……呼んだのか……?
まるで……“帰る場所”に引き戻すみたいに……」
少年が残した最後の言葉が、研究施設の空気に重く落ちる。
——呼ばれたから、行く。
その瞬間、本部の者たちは悟った。
あの少年は“捕獲された存在”などではなく、
“界層が必要とする何か”だったのだと。
そしてその消失は、
これから起きる災厄の“始まりにすぎない”と。




