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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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18/111

健太郎との関連性(本部視点)

ガーディアン本部・第零会議層は、常の白光を抑え、警告色の淡い赤に染められていた。

円卓を囲むのは研究班、監察班、界層管制局の代表者たち。彼らの前方ホロには、複層ゲート近傍で得られたデータ波形が、脈動するように揺れている。


監察班長・氷室は、指先でホロを拡大した。


「以上が、侵入者確保時の界層データだ。……問題はこの瞬間だ」


波形が一気に跳ね上がる。

ゲートの鼓動が、あたかも何かに“呼応”したように脈打つ。


研究官Bが眉を寄せる。


「天城健太郎が現場付近に到達した瞬間……ですね?」


「そうだ。偶然とは言いがたい振幅変化だ」


氷室は席に視線を巡らせた。


「加えて、確保した無属性少年――アレが、健太郎を『知っていた』。名前を呼ばれたわけではないが、視線の固定と反応パターンは明確だ」


研究班がざわついた。


「しかし、本来“界縁反応”は虚界存在の指標のはずだ。健太郎は人間のはず……」


「“はず”で説明が済むなら、我々はここまで苦労しない」


氷室は淡々と言い放つ。


「健太郎はなにかしら、界層の封印網の一角に影響を与えている可能性がある。無属性少年の存在波と同期した反応……。予断は許されない」


重い沈黙。


ついに本部首脳Aが口を開く。

その声は、氷室より静かで、より冷たかった。


「少年との接触は危険……という報告だったな、氷室」


「はい。双方が再び接触すれば、どの層が“揺れる”か予測がつきません。ゆえに健太郎を現場から遠ざけるべきだと――」


だが首脳Aはあっさりと首を振った。


「逆だ。――近づけろ」


会議室が一瞬凍りついたように静まる。


氷室が訝しげに目を細める。


「……理由を伺ってよろしいですか」


「簡単だ。双方が“反応”した。あれは偶発ではない。ならば観測値を得る機会を、こちらから作ればよい」


淡々とした口調は、まるで人間ではなく計算機が告げているようだった。


「天城健太郎は、少年と同じ“界縁帯”で揺らいでいる。どちらが原因か――あるいは両者は同じ発生点から流れ着いたものか。いずれにせよ、我々には観測が必要だ。健太郎は……サンプルとして存分に利用できる」


その言葉に、室内の温度がさらに一段階下がった気がした。


氷室は、短く息を整え、形式的に答える。


「……了解しました。本部の意向に沿い、プロトコル・ルートBへ移行します」


首脳Aは満足そうに頷いた。


「少年は封鎖区画で解析を続ける。健太郎は、支部で自由に動かして構わない。――むしろ、動かせ」


最後の一言は、命令というより“実験条件の設定”に聞こえた。


やがて会議が終了し、関係者が退出していく。

誰も声をあげない。ただ静かに、本部は“観測計画”へと滑り出した。


少年と健太郎の無自覚な関係は、すでに本部によって、冷徹極まりない研究案件へ変わっていた。

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