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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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16/111

本部による情報封鎖

東支部・司令室。

夕刻の光が斜めに差し込み、モニターの輝度だけが異様に鋭く浮かび上がっていた。


その中央に、一本の通達が静かに表示される。


――「侵入者に関する一切の報告を禁止する」

――「現場記録・監視映像・魔力反応ログ、全てを本部へ即時送付せよ」

――「以後、支部側での閲覧権限は無効化する」


文字は無機的なのに、ひどく重かった。


霧亜が読み終えた瞬間、手にした端末をわずかに握りしめる。


「……こんな、露骨な封鎖……」


美香も顔色を変えて舌を巻く。


「全部、本部に吸い上げて……支部には“見るな”ってこと?」


窓際に立つ夜宮は腕を組んだまま、通達から視線を離さなかった。

その表情は淡々としているようで、瞳の奥に抑え込んだ苛立ちが揺れている。


「明らかな越権だ。事後承認すらない」


低く呟いた夜宮の声は、冷え切っていた。


霧亜は慎重に言葉を返す。


「……反論は、されますか?」


夜宮は短く息を吐き、目を閉じる。


「今、逆らえば──北東支部ごと“処分対象”にされかねない」


室内の空気がひりついた。

冗談ではなく、本部が本気でそうする権限を持っていることを、彼らは知っていた。


夜宮はしばし沈黙したのち、声を落とす。


「本部がここまで急ぐのは……あの少年を、“禁制存在”に近いと判断したのだろう」


霧亜が振り返り、困惑したまま問う。


「禁制……? あの、理論上だけの……架空の規定ですよね?」


夜宮はゆっくりと首を横に振った。


「本来は、ね」


彼は窓の外を見た。

沈みかけた陽光が、山の稜線を鈍い金色に染めている。


「だが──本部が動くときは、“架空”が現実になる。

そして、現実になった規定は……必ず誰かを消す」


霧亜と美香が息を呑む。

健太郎は言葉の意味を完全には理解できないまま、しかし胸に冷たいものだけがじわりと広がっていた。


夜宮は柔らかくも鋭い声音で締めくくった。


「気を付けておけ。

本部は、真実を知った者から順に、口を塞ぐ組織だ」


その言葉は、夕闇が迫る支部司令室に、静かな警鐘として沈んでいった。

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