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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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12/111

夜宮が健太郎を試す任務を発令

翌日の夕方。

カムイ支部の出撃ゲート前は、通常の放課後とはまるで違う空気に包まれていた。

警報色の照明が薄暗い通路を染め、魔力安定装置の低い振動が床を震わせている。


ゲートはまだ開いていない。

だが、その前に立つ隊員たちの表情には、すでに戦場の緊張が宿っていた。


霧亜と美香は準備を整え、健太郎は少し遅れて走り込む。


「来たか、健太郎」


夜宮レイジがゲート前に立っていた。

黒いコートの裾が揺れることなく落ち着いている。

周囲のざわめきの中心で、彼だけは静かだった。


霧亜が健太郎の腕を掴み、低く囁く。


「緊張しないで。今日の任務は、あくまで観測だけだから」


しかしその声は、どこか無理に落ち着いているように聞こえた。


すぐに管制室から通信が入り、場内にアナウンスが響く。


『北東域・第三潜在ゲート、鼓動周期が急加速。

境界密度、臨界値に接近。近隣部隊は即応態勢に移行せよ』


ざわめきが一段高くなり、数名の隊員が顔を見合わせた。


夜宮が一歩前に出る。


「今回の調査班を正式に編成する。

立科健太郎、霧亜、美香——三名は私の命令下で第3潜在ゲートへ向かう」


健太郎は思わず問い返した。


「俺も……ですか?」


夜宮は即答した。


「君を外に出すのはこれが初めてだ。

だが、今の状況では“机上の観測値”では足りない。

——君の界縁反応を、現場で確認する」


健太郎は喉が鳴るのを自覚した。

昨日の測定で自分の数値がおかしいことは分かっている。

だが、それが何を意味し、何を引き起こすのかは分からない。


「俺に……何ができるんですか?」


夜宮の黒い瞳がまっすぐ向けられる。

そこには期待でも圧力でもない、“事実を知る覚悟”だけが宿っていた。


「分からない。

だから——確かめる」


静かな声だったが、支部内の空気がわずかに震えた。


霧亜が前に出て、夜宮を鋭く見つめる。


「私が、責任を持って彼を見ます。

……絶対に無茶はさせません」


夜宮は頷かず、拒まず、ただ霧亜を観察して一言だけ付け加えた。


「それでいい。

保護と観測は両立する」


美香は健太郎の肩を叩いた。


「大丈夫だよ。私たちがいる」


健太郎はうなずこうとしたが、鼓動が速くなる。

ゲートの向こうで何が待つのか、自分がどんな存在なのか——

それを知る瞬間が迫っている。


管制室の声が響く。


『境界安定装置、起動——ゲート開放準備。鼓動周期、同期開始』


夜宮が振り返る。


「行くぞ。

潜在ゲートの鼓動は、昨夜の魔力流出地点と……完全に同期している」


霧亜の表情が一瞬だけ固まった。


健太郎はその意味すら理解しないまま、揺れるゲート光を見つめた。


次の瞬間——

ゲートが開く。

青白い境界光が吹き出し、小隊の影を伸ばした。


立科健太郎の人生は、この一歩で“日常”から離れていく。


そして——世界の破綻の序章が、本格的に始まろうとしていた。

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