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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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新しい世界構造 世界の状態

虚界は、消えなかった。


だが、もはや世界の外側に張り付く影でもない。

顕現することはない。

侵入もしない。


それでも、確かに在る。


五界と重なり合う、薄い層として。

触れられるが、踏み込めない距離で。

拒まれず、押し返されもしない位置に。


――虚界は、存続した。

顕現不可、接続可能なまま。


五界もまた、ひとつにはならなかった。


天使界の秩序は、他界を裁かない。

精霊界の循環は、全世界を包み込まない。

霊界の観測は、現実を縛らない。

獣界の生は、淘汰の名で正当化されない。

人間界は、管理者の座に戻らない。


境界は、再構築される。


固定された壁ではない。

壊せば終わる線でもない。


状況に応じて揺らぎ、

意志に応じて開閉する、緩衝層。


交渉は可能。

侵略は不可。

統合は選択肢の一つに留まり、

分断もまた、永続の前提ではなくなる。


誰も、支配しない。


境界神の設計は終わり、

教団の救済も強制力を失い、

ガーディアンは監視者ではなくなる。


世界は、委ねられる。


決める権限を持つ者がいない、という意味ではない。

決めることを急がされない状態に戻った。


その変化を、最初に言葉にしたのは美香だった。


彼女は、精霊界のざわめきと、

人間界の沈黙と、

虚界の静かな残響を、歪めずに受け取る。


そして、翻訳する。


「……世界は、

 “今は決めない”って言ってる」


それは逃避ではなかった。

先送りでもなかった。


選択肢を、消さないという決断。


未選択の可能性が、

未選択のまま存在することを許す構造。


世界はようやく、

自分に余白を与えた。


誰かが代わりに選ぶ時代は終わり、

誰も選べない閉塞も越えた。


決断は、未来に残される。


そしてその未来は、

もう一度、選び直せる。

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