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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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最終接触:健太郎と少年 対話空間

ゼロ化領域の中心には、何もなかった。


光も、闇も、境界も、意味を失い、

ただ均質な空間だけが広がっている。


そこに立っているのは、二人だけだった。


少年と、健太郎。


世界の声は届かない。

虚界の衝動も、五界の法則も、ここでは主張できない。

誰かに「選べ」と迫るものは、もう存在しなかった。


健太郎が口を開く。


「戻ろう」


その声には、力も説得も含まれていない。

ただ、事実の提示のように、淡々としていた。


少年は、ゆっくりと顔を上げる。


「……どこに?」


健太郎は少しだけ考え、言葉を選ぶ。


「統合じゃない」

「選び直すために」


少年の胸の奥で、何かがほどける。


これまで、彼の内側には常に声があった。

否定された世界。

選ばれなかった未来。

救われなかった存在たちの圧力。


「戻れ」

「在れ」

「忘れるな」


それらは、善意の形をしていた。

救済という名を名乗っていた。


だが今、その声は遠い。


消えたわけではない。

ただ――距離がある。


少年は、初めて自分の輪郭を感じていた。


自分は「選ばれた存在」ではなかった。

作られた救世主でもなかった。

虚界が戻るために用意した、反転核。


――器。


その理解は、静かに胸に落ちる。


だが同時に、別の考えが浮かぶ。


器であることと、

道具で終わることは、同じではない。


少年は、健太郎を見る。


「……俺が、決めていいのか?」


その問いには、恐れが滲んでいた。

責任への怯え。

間違えることへの恐怖。


健太郎は首を横に振らない。

肯定もしない。


ただ、はっきりと言う。


「世界の代わりじゃない」

「お前として、だ」


少年は目を閉じる。


虚界の衝動が、遠くでうねる。

五界の混線が、かすかな残響として響く。


だが、それらはもう、彼の手を引かない。


彼は、自分の意思で、立っている。


ゆっくりと、息を吸い、吐く。


「……分かった」


その言葉は、宣言でも決意でもない。

ただ、選択を引き受けるという事実だった。


ゼロ化領域の静寂の中で、

少年――リヴァースは、初めて

自分自身の立場を取り戻した。


世界は、まだ壊れかけている。

未来も、保証されていない。


それでも。


選び直すための場所に、

彼は、自分の足で戻ろうとしていた。

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