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ガーディアン・リヴァース:境界を駆ける者たち  作者: 南蛇井


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五界の反応:連合ではない抵抗 各界の限界

儀式が進むにつれ、五界は「連合」を形成する余地すら失っていった。

それぞれが崩れ、噛み合わず、抵抗にすらならない反応を晒していく。


天使界では、聖律が沈黙していた。

命令体系は存在している。判断基準も記録されている。だが、それらを適用する前提条件――「世界が一つである」という暗黙の前提が、すでに失われている。


善悪を定義できない。

優先順位を付けられない。

結果、聖軍は停止した。


翼を持つ者たちは、剣を下ろしたまま立ち尽くしている。

命令なき秩序に、彼らは耐えられなかった。


精霊界では、異変はさらに露骨だった。

循環が歪み、地脈が軋み、風が方向を失う。自然は自律を失いかけ、暴走の一歩手前に踏みとどまっている。


それを辛うじて繋ぎ止めているのは、美香だった。


彼女は命じていない。

抑え込んでもいない。

ただ、精霊界の声を、人間界に流し続けている。


疲弊、恐怖、ためらい。

「壊したくない」という感情だけが、かろうじて均衡を保っていた。


霊界は、最初から動けなかった。

観測層が重なりすぎ、干渉そのものが不可能になっている。未来も過去も同時に見え、どこに手を伸ばしても因果が確定しない。


沈黙を選び続けてきた霊界は、ついに沈黙する意味そのものを失った。

見守る立場は、世界が一つになる過程では成立しない。


獣界では、理性が剥がれ落ちていく。

境界の消失により、資源が流れ込む。だが同時に、競争相手も無制限に増える。


生き延びる。

奪う。

逃げる。


それだけが残り、本能が暴走する。

彼らは戦っているが、何かを守っているわけではない。


人間界では、最も静かな崩壊が起きていた。

指揮系統が消えた。

誰も「決める権限」を持たない。


代行者は否定され、管理者は瓦解し、英雄を名乗る余地すら残されていない。

人々は問いを持っている。だが、答える主体がいない。


――誰も、止められない。


戦場を俯瞰する夜宮は、その事実を冷静に受け止めていた。怒りも焦りもない。ただ、理解だけがある。


「……誰かが代行すれば、」


低く、誰に向けるでもなく呟く。


「また同じことを繰り返す」


統合を決める者。

分断を守る者。

どちらも、世界の代弁者を名乗った瞬間に、過去の再演になる。


五界は今、救われていない。

だが同時に、誰にも奪われていない。


この停滞こそが、崩壊寸前の世界に残された、最後の余白だった。

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