第5話「異端と呼ばれる日」
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、カイが初めて「自分の選択」が周囲に受け入れられないという現実に直面する回です。
人を救ったはずなのに、疑われ、恐れられる。
そんな理不尽の中で、それでも“選び続ける強さ”を彼がどう見出すのか……お付き合いいただければ幸いです。
「……魔瘴を見た?」
村長の目が鋭くなった。
広場の中心。カイは、救出したニコルのこと、森で見た紫の瘴気のことを正直に伝えた。
だが、周囲の空気は凍りつくようだった。
「そんなバカな話あるかよ。北の森は今朝も見回ったが、異常なんてなかったぞ」
「ほんとに魔瘴なんてあったのか?」
「お前、何か“おかしなもの”に触れたんじゃないのか?」
村人たちの視線が、疑念と不安でじわりと染まっていく。
(変わった……“前の時間”とは違う……)
前の人生では、ニコルは助からなかった。
今回は助けた。それだけで、未来が少しずつ狂い始めている。
だが、同時にそれは、村に“異物”として認識される引き金でもあった。
「……ニコル本人からも話を聞いた方がいい」
カイがそう言うと、村長はため息混じりにうなずいた。
「……なら、本人を呼ぼう。だがカイ、お前は一度“医師の診断”を受けろ。何かに憑かれてる可能性がある」
「……っ」
冷や汗が背を伝う。
“力を持つ者”が、疑われ、排除されていく流れ――
これは、彼が過去に何度も見てきた「滅びへの序章」だった。
その夜。
カイは一人、村のはずれの納屋に隔離された。
「すまんな。お前が悪いとは思ってない……だが村の空気が悪くなってきた。少し静かにしていろ」
見回りの青年がそう言って、扉を閉じる。
真っ暗な中、カイは膝を抱えてうずくまった。
(救ったのに……正しいことをしたのに……)
頭ではわかっていた。力を行使する者は、時に恐れられる。
けれど実際に“誰にも信じてもらえない”という状況は、想像以上に冷たかった。
そのとき。
「……まだ、始まったばかりよ」
暗闇の中に、ひとすじの光。
リシアの姿が現れた。壁にも扉にも影響されず、ふわりと現れる彼女の存在はまるで幻のよう。
「力を持つ者は、孤独になる。でも、だからこそ選べる未来があるの」
カイは、リシアのまなざしに目を向けた。
「俺は……間違ってないよな?」
「ええ。あなたの選択は、確かに一人の命を救った。だから、もう一度聞くわ。次も、選べる?」
「……選ぶよ。間違われても、恐れられても……俺はもう、目をそらさない」
その声に、リシアは小さく微笑んだ。
「それでいい。次に訪れる“選択”は、もっと重いけれど――あなたなら、きっと超えられる」
やがて彼女の姿はかき消え、闇だけが戻った。
カイはそっと目を閉じた。
孤独の中に、小さな決意の火が灯る。
それが、彼を次の“運命の場”へと導いていくのだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
第5話では、カイの孤立と決意を中心に描かせていただきました。
世界を変えるには、まず自分の信じた道を歩む勇気が必要である――そんな一歩を、彼は今踏み出しました。
次回からは、少しずつ“仲間”や“敵”が物語に深く関わっていきます。
引き続き、カイの選択と成長を見守っていただけたら嬉しいです。