第3話 「最初の選択、最初の違和感」
お読みいただきありがとうございます。
今回は、前回の出来事を経て、カイが初めて“自分の選択”を迫られる場面となります。
何気ない日常の中に潜む異変。そして、最初の小さな選択が、やがて世界の命運を左右していきます。
少しずつ物語が動き始めるこの回、楽しんでいただけたら幸いです。
カイは目を覚ました。
周囲はいつもの村の朝。聞き慣れた鶏の鳴き声と、薪を割る音、朝露に濡れた土の匂い。
――夢だったのか?
彼は、昨夜見た壮絶な幻と少女の言葉を反芻する。
手元を見ると、銀色に輝く羽根のような光はもう消えていた。
それでも、確かに覚えている。
【リユニオンコード】という自分だけのスキルと、リシアという少女のまなざし。
「……夢じゃない」
彼はそう呟いて立ち上がると、着慣れた作業着に袖を通した。
今日も変わらず、村人としての一日が始まる。――そう思っていた。
「なぁ、聞いたか? 北の森で、また“魔瘴”が広がってるらしいぞ」
「またかよ。あそこ、去年も村の羊が3匹やられただろ……」
村の中央広場。水汲みをしていると、年上の若者たちがひそひそと話しているのが聞こえた。
魔瘴――それは魔力の瘴気。
魔物を狂わせ、土地を腐らせる“滅びの兆し”だ。
カイの胸が、不意にざわつく。
(前の世界でも……あの“滅び”は、最初は小さな魔瘴から始まった――)
彼の記憶がかすかに呼び覚まされる。
小さな異変が、やがて村を、国を、世界全体を飲み込んだのだ。
「カイ、薪の束はどうした! 昼までに届けるんだぞ!」
村長の怒鳴り声に、思考が断ち切られる。
「は、はい!」
彼は慌てて走り出した――だがその足は、ふと止まる。
もしこの“魔瘴の広がり”が、また世界の終わりの始まりなら?
何もしなければ、きっとまた同じように滅びが訪れるのだとしたら?
「……俺に、できることなんて」
そう思いながらも、彼は視線を北の森へ向けた。
そのとき、耳元で“聞こえるはずのない声”が囁いた。
『選びなさい、カイ。これは小さな“試練”――未来は、君の選択で変わる』
リシアの声だった。
そして彼のステータスウィンドウには、見覚えのない文字が浮かんでいた。
【リユニオンコード 試練分岐:小規模異変介入】
選択肢:
▶ 放置する(ループ発動条件が近づきます)
▶ 介入する(新たな未来が開かれます)
(これが……“最初の選択”なんだな)
カイは静かに、深呼吸をひとつして――
「……行くしかないか」
薪束を背負ったまま、北の森へと歩き出した。
それが、全ての運命を変える第一歩となるとも知らずに――。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
第3話では、主人公カイが“最弱の村人”から一歩踏み出すきっかけとなる選択を描きました。
彼はまだ何も持っていませんが、それでも選ぶことを始めました。
この先、彼がどんな未来を引き寄せていくのか――ゆっくり見守っていただけると嬉しいです。
次回も、ぜひよろしくお願いいたします!