第2話 「滅びを知る少女」
お読みいただきありがとうございます。
今回は、主人公カイが「世界の滅び」と向き合い始める重要な回になります。
無力だった少年が、運命の渦に巻き込まれていく……そんな始まりを感じていただければ嬉しいです。
――これは夢なのか、それとも現実なのか。
カイは、自分の目の前に広がる光景に言葉を失っていた。
山が崩れ、街が燃え、空が裂ける。
勇者と魔王が激突し、世界そのものが悲鳴を上げていた。
だが、それは“現在”ではなかった。
「ここは……?」
「これは、世界が三度目に滅びた時の記憶。私が見てきた最後の瞬間よ」
そう告げたのは、あの少女だった。
彼女の名前はリシア。
かつて“世界記録官”と呼ばれていた存在であり、滅びの度に一人だけ記憶を引き継ぐ「観測者」だった。
「私は三回、世界が壊れるのを見た。そして今、四度目の終わりが近づいている」
「でも今回は、あなただけが“鍵”として選ばれた」
「俺が……? でも、俺はレベル1の村人だ。ただの……何もできない奴なんだ」
「だからこそ、なのよ」
リシアは、静かにそう返した。
「この世界は強者に支配されてきた。そして、その強さこそが滅びを招いたの」
「最も無力な存在だからこそ、あなたは誰よりも“正しく世界を選べる”」
そのとき、カイの胸に淡い痛みが走る。
ステータスウィンドウが自動で開かれ、彼の目に新しい項目が表示された。
【特殊スキル:リユニオンコード】
効果:世界が一定条件下で崩壊した際、自動的にリセットし、記憶を引き継ぐ。
発動条件:死亡、または世界の崩壊。
「これが……俺の、スキル?」
「ええ。あなたは“最弱の神”なの。力ではなく、選択と意志で未来を創る存在」
カイはその言葉を、まだ信じきれずにいた。
だが、同時に胸の奥で何かがざわめいていた。
滅びの記憶。
それを変える力を自分が持っているという事実。
「もし本当に俺に……できるなら……やってみる。もう誰にも、世界を失わせたくない」
カイの瞳に、初めて“決意”が宿った。
その瞬間、夢のような幻影が静かに霧散し、彼は再び現実の村に立っていた。
リシアの姿は消えていたが、彼の手には――銀色の羽根のような光が、確かに残っていた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
第2話では、カイに隠された“世界をやり直す力”の存在と、リシアという重要なキャラクターが登場しました。
まだまだ謎が多い展開ですが、少しずつ明かしていければと思います。
もし感想やご意見などあれば、励みにもなりますのでお気軽にお寄せください!