〝拝啓、わたしを虐めていた人たちへ。〟
宝石箱に入れた石ころに価値がでる頃には人類なんてきっともう滅んでいて、地球には惑星アイルロンからの移住者しか住んでいないんだろうね。わたしは元気です。
わたしたちが通っていた高校は宇宙連合軍の本拠地に変わって、入学式の日に撮った写真は古代文明由来の暗号鍵として使われている。水泳部の部室は礼拝堂。野球部の日誌は地底人の行方を示す重要な手がかりとして厳重に保管されているんだって。でもまだ読み解けた人はだれもいないらしいよ。良かったね。知らないけど。
——あなたはいま何をしていますか。
わたしはヒトゴロシをしています——。
有機生命体が生まれてから今日まで四季が続いてきた奇跡を噛み締めながら飲むコーヒー。神さまの機嫌次第でしか生きられないわたしたちを憐れんで、天気予報は星が涙を流す日を教えてくれるんだね。ビー玉でできた宇宙が交通事故を起こして生まれたのが宝石で、そんなもののために高いお金を払うなんて馬鹿みたいだって。言えないから、わたしはヒトゴロシにしかなれない。いつまでも、最低な大人にはなれないんだ。
宇宙人の存在を信じられるのはわたしがヒトゴロシだからなのか、虐められていたからなのか。交差点の真ん中で握るナイフが冷たく夜を刺して、悲鳴を殺した雪がわたしにむかって微笑んでいる。午前二時。四分前。藍色をしたわたしの青春が、オーロラみたいなガラスの窓に、口紅で残したさよなら。わたしはわたしが嫌いです。あなたよりも、ずっと。
……。
…………。
拝啓、わたしを虐めていた人たちへ。
あなたはいま何をしていますか。
わたしは元気です。
ヒトゴロシをしています。
敬具




