〝紫色の才能〟
この一行のためなら才能が枯れてもいいって、
そう思えるのはキミが本気じゃないからで、
だから本当に才能が枯れてしまったとき、
キミはピエロになるしかなかった。
この世界には青色の才能だけじゃなくて、
紫色の才能も、黄緑色の才能もあって、
でも赤色の輝きしか見える人がいないから、
金色の才能を持ってしまったわたしは、
今日も詐欺師の真似事をして過ごす。
「才能なんて目に見えないものにいつまで振り回されなきゃいけないのかな」
そうキミが訊ねてきても、だからわたしに言えることはたったひとつだけ。
「しょうがないじゃん。才能だけしかあなたを見てくれないんだから」
こんな言葉、だれに届かなくてもいい。
――だれかに語りかけるように書いてるくせに。
花束みたいな匂いが嫌になって、
ペトリコールの香りを振りかける。
クジラに侵食されたみたいな夕暮れが、
香水みたいにわたしの体内から蒸発していく。
どっちがいいんだろうね。
心を失うのなら。
世界に怪獣が現れて壊していくのと。
世界に怪盗が現れて盗んでいくのと。
「後者だったら最悪だよ」
そうキミが夜に向かって微笑んだ瞬間、
ため息が消えていくような世界に生まれたわたしには、
さよならが最期まで綺麗に言えなくて。
「詩人に、なりたかったんだ」
道化師が流すヒカリに呑み込まれたわたしの輝きは、
赤色にも、紫色にも、金色にさえもなれない。




