〝砂漠で生まれたキミ〟
月が太陽に変わったところでわたしが明日ラーメンを食べに行くことに変わりはないし、砂漠で生まれたキミが海を見ることもなく死んでいくことに変わりはない。
棒アイスを食べて当たりが出た人から大人になる世界では、包み紙が唯一の紙幣。いつまでも子どものままでいるために餓死する寸前まで節約をして、当たりが出なかったことに歓喜しながらラーメンを啜るの。
朝。モールス信号で打ち出した「おはよう」が流れ星になって砂漠の空を通る頃。キミがダイヤモンドに託した「さよなら」がわたしの血肉へと変わった。
世界中でいちばんキミが好き。
……かもしれない。
かもしれないを付けるだけで世界のぜんぶを知らなくても許されるなんて、ずいぶん気前の良い世界なんだなと思って、でもその方が都合が良いから何も言わずに受け入れる。自分が動物だってことを忘れてしまった方が綺麗に生きられるのと一緒。世界最大のバグ。
だからわたしは猫になりたいとハンバーガーを食べながらいつも思った。
夜。キミが宇宙へと飛び立つまでの間、辞書を引いて抜き出した言葉でしりとりをして、見たこともない海の姿を想像しながらラーメンで負けてしまったキミは気づくの。「でも、ラーメンってどんな色をしてるんだろう?」
「キミが想像したなかでいちばん綺麗な色かもしれない」と、キミの乗るロケットが月に消えていくのを見ながら答えたわたしが大人になる頃には、ダイヤモンドなんてきっとただの石ころ。星みたいなもんだよ。




