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〝真冬の窓〟
さよならが生まれてから死ぬまでのあいだに消えた星の数だけ涙を流せるのなら、キミはもう立派な大人です。
真冬の窓に月が歪んで見える。
誰にも邪魔されることのない光が夜を進んで、誰からも愛されることのないキミを見つけた。自動販売機の明るさに慣れた瞳。カーテンの奥から届く優しさに包まれた世界では、キミの声は燃えないゴミの日に纏められた噛みかけのガムでしかなかった。
真冬の窓に月が歪んで見える。
偶然と必然の違いを説明できないから、早く大人になりたいと願っているキミの傍で爆竹が鳴って、夢から覚めたペンギンが空を落ちていた。バッドエンドで終わる絵本。飛べない鳥がチョコレートを求めて旅立った夜、カミナリに打たれたキミの体が砂糖のように溶けていった。
さよなら。
キミはもう立派な大人です。




