55/88
〝ヘタクソな魔法〟
アパートのベランダで
天体観測をした
冷たさが頬を刺して
もう寝たかったけれど
こぼれた星が
ヘタクソな魔法みたいで
その日、僕は初めて
夜更かしをしたんだ
あくび混じりの朝は
映画のエピローグに似てる
知らないことがいっぱいあって
それを知らないということも
気づいていなかった
プロローグをめぐった朝
きのうよりもずっと
魔法使いになれた
空の青さも
雪の冷たさも知らない
大人にはなりたくなかった
風が吹いたベランダ
落ちてきた魔法を
いつまでも忘れないで
いれたらいいのになあ




