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〝想像力で月は見えない〟
はじいたコインが
月をさらった夜
悲しみがあふれて
駐車場にいた僕ら
沈みゆく街に
別れを告げていた
想像力で月は見えないと
思い知らされた朝
壊れた信号機の裏で
泣いていた猫
落ちていたコインを
拾って投げた空に
夜のなごりがぽっかりと
口をあけていた
さよなら、フィクション
想像力の限界が
もたらした喪失
憂鬱を目にした僕らは
散らばった月のカケラを
ずっと探し続けている
想像力、きみがいたせいで
失った愛のかず
かぞえるのも馬鹿らしくて
はじいたコインの音
終わった街の匂いが
諦めた僕らを責めるように
夜をさまよっていた
さよなら、フィクション
想像力の限界が
もたらした現実
幻影を前にした僕らは
失った月のなごりを
ずっと探し続けていた




