48/88
〝妖精の羽〟
月よりもキレイな妖精が
羽を広げ飛んでいく
くすくすクスクス
意地悪く
ほほえみながら
何かを探している
彼の目と重なるわたしの目
恥ずかしさにそむけた
視線の先
妖精が
八月の涙のように
あざ笑っていた
ああ、わたしにも羽があったのなら
きみのもとまで飛んでいくのに
ああ、わたしにも勇気があったのなら
きみの視線を独り占めするのに
勇気のないわたしの手は
星に向かって伸ばされるばかり
やさしく頭を撫でている
きみの手がヒラヒラと
嬉しげに舞う妖精の
にやけた目
唇をかみしめたわたし
はなやいだ空気の向こうから
星屑のような涙が
地獄から落ちていた
ああ、わたしにも羽があったのなら
きみのもとまで飛んでいくのに
ああ、わたしにも勇気があったのなら
きみの視線をひとりじめするのに
勇気のないわたしの目は
虚空だけを見つめて動かない
ああ、わたしにも羽があったのなら
きみのもとまで飛んでいくのに
ああ、わたしにも勇気があったのなら
きみの視線をひとりじめするのに




