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〝気づいたのは昨日のことでした〟
繋いだ手から届いた優しさに
気づいたのは昨日のことでした
暮れなずむ空から聞こえる
五時を告げる歌
ひとけのない公園で
待ちぼうけた目に映る
笑顔
いつだって笑顔
掴む手のひらからこぼれた優しさに
気づいたのは昨日のことでした
何かが気に食わなくて
喧嘩した夜
差し伸ばされた手を
無視して飛び出た
ひとけのない公園で
吐き出した息が白く
白く白く消えていった
伸ばされた手に残る優しさに
気づいたのは昨日のことでした
暮れなずむ夕暮れ
笑顔はじけるきみの
小さな手を握りしめる
胸にやどった優しさに
気づいたのは昨日のことでした
繋いだ手から与える優しさに
気づいてくれなくても大丈夫
ただいつか
同じように握りしめる手に
残ってさえいてくれれば




