〝特別だった何か〟
特別だった何かが
あたりまえになること
それが幸せなんだと気づいた
はたちの夜
僕はキミの手をそっと握りしめた
初めてのデート
寝癖を必死で押さえつけて
駆け込んだ改札に
ムッとした顔を見せたキミ
初めてみた私服姿に
似合ってるね、とか
言えればよかったのに
ガチガチだった
僕はなにも言えなかったんだ
キミが笑顔を見せるたびに
時間が止まって欲しくて
写真を撮ったスマホのなか
思い出がこなゆきのように
ゆらゆらと輝いていた
楽しい思い出だけなら
キミとじゃなくても作ってきた
泣いた日もあったし
喧嘩した日もたくさんあった
もう会いたくない
売り言葉に買い言葉
酷いことをくちばしった
冬の公園で見た
白い息を覚えてる
キミと仲直りをするたびに
ほっと安堵してぎゅっと
抱きしめたキミのからだ
ぬくもりが夕立のように
ひらひらと舞っていた
キミと過ごしてきた季節
数えたらもう何度目になるんだろう?
これからも未熟な僕たちは
これからもいっぱい喧嘩する
だけどずっと
キミと一緒にいれたらいいな
特別だった何かが
あたりまえになること
それが幸せなんだと気づいた
はたちの夜
僕はキミの手をそっと握りしめた




