〝コモレビから透ける夏はアオイロでした〟
コモレビから透ける夏はアオイロでした
ミドリが照らしたからだはアカく輝いていて
シロく浮かんだ太陽が
月のような微笑みを投げかけていました
もしも夏が人間になって降りてくるとしたら
世界はきっともっとカラフルになる
そうわたしは思いました
コモレビから覗く夏はジュンパクでした
かざした手の先にあるアオは透明で
高くのぼった入道雲が
わたあめのように甘くたゆたっていました
もしも夏が人間になって降りてくるとしたら
世界はきっともっと明るくなる
そうわたしは思いました
コモレビが消えた夏はハイイロでした
こずえを襲う雨は酷薄で
ソラに走った稲妻が
汽笛のような激しさで轟いていました
もしも夏が人間になって降りてくるとしたら
世界はきっともっと残酷になる
そうわたしは思いました
コモレビから届く夏はオレンジでした
黄昏にかがやいたソラの上を
ワタリドリがのびやかに飛びまわっていて
こずえに沈む夕日が
雲をアカネイロに染め上げていました
もしも夏が人間になって降りてくるとしたら
世界はきっともっと優しくなる
そうわたしは思いました




