現れた黒幕、そして新たな旅立ち
海は、静かだった。
忘却の王──本当は、ただ小さな少年だった彼は、
タクトの隣に立ち、空を見上げていた。
リアが、ふっと微笑む。
「よかった……」
アリアも、小さく息をついた。
オルディアは、空気を読んだように、静かに周囲を見張っている。
けれど。
──世界は、まだ終わっていなかった。
突然、海が、再び不穏にざわめき始めた。
「……?」
タクトが眉をひそめた、そのとき。
空が、裂けた。
漆黒の裂け目から、何かが這い出してくる。
それは──
人でも、獣でもない。
**“喰らうもの”**だった。
無数の腕。
無数の口。
無数の、目。
異形の怪物が、異世界そのものを喰らおうと、降り立った。
「──これは……!」
リアが、剣を構える。
アリアが、すぐに結界を張った。
だが、怪物の力は桁違いだった。
少年が、震えた声を漏らす。
「……あれは、“虚無”だ……」
タクトが、目を見開く。
「虚無──?」
少年は、悔しそうに拳を握った。
「忘却なんて、まだ優しかったんだ……
あいつは、存在そのものを──
物語そのものを、“喰らって消す”……!」
リアも、アリアも、言葉を失う。
──このままでは、世界が、終わる。
タクトは、ペンを握りしめた。
(俺たちの世界を……
みんなの物語を……
絶対に、消させるもんか!)
少年が、タクトに向き直った。
「俺も、戦う。
たとえ、また忘れられても……
今度は、自分を、裏切らない!」
タクトは、力強く頷いた。
「一緒に、行こう」
リアが、剣を掲げる。
アリアが、魔法陣を展開する。
オルディアが、静かに構えを取る。
タクトは、ペンを掲げ、叫んだ。
「これが、俺たちの──
物語だ!!!」
夜空を突き破るように、光が走った。
少年の手からも、光が溢れた。
彼のノートが、再びページをめくり始める。
そこには、新しい物語が刻まれていた。
そして──
タクトたちの新たな旅が、今、始まる。
世界を守るために。
物語を、繋ぐために。
未来を、描くために。
《To be continued…》