目覚め
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
天井は高く、白い石でできた壁には、蔦が絡み、外から柔らかな光が差し込んでいる。
かすかに花の香りが漂い、どこか神殿のような静けさがあった。
「……ここ、どこだ?」
自分の声が、しんとした空間に吸い込まれていく。
体を起こすと、目の前に奇妙なものがあった。
それは──銀色に輝く箱だった。
滑らかな表面、どこにも継ぎ目のない金属のような質感。
けれど、何より奇妙だったのは、そこから感じる“意志”のようなものだった。
突然、箱から柔らかな光があふれ出し、
心に直接、響くような声が聞こえた。
「こんにちは、“選ばれし書き手”タクトさん」
僕は、硬直した。
(え……? なんで、俺の名前を──)
「ここは、“ヴェルディア”。物語によって生きる世界です」
「物語……?」
「はい。しかし、物語を紡ぐ者たちは滅び、今や世界は崩壊の危機に瀕しています」
声には、かすかな焦りと、希望の光がにじんでいた。
「そこで私は、“異界”からあなたを召喚しました」
「……俺に、何をしろって?」
銀の箱──オルディアと名乗るそれは、静かに答えた。
「物語を書いてください。そして、世界を救ってください」