05_脱出
い、生き残った……。
てか、色々とあり過ぎて訳分かんないんだけど?!
一旦、落ち着いて考えてみる。
まず、体の痛みが無くなった件。
……今も痛みは感じないんだけど、原因は『闇』を吸い込んだせいって事で良いのか?
オットーさんが「体は魔力で造ってます」と言ってたから、すんごい勢いで回復する機能も付けてくれてる可能性もある。
けどそれなら、訓練の際に木刀で打ち合った痛みがなかなか抜けなかったのと辻褄が合わない。
う〜ん……。
この『闇』が魔力を含んでいるのなら、それを吸い込んだ事で魔力も取り込んだ事になって、魔力で出来た体が回復した、という事はありそう。
てか、それしか考えつかなくない?
でも、この『闇』って毒だよね?
それも、あの大蛇が嫌がるほどの猛毒。
……なんで私は平気なんだ?
いや、平気に「なった」のか、最初は苦しかったし。
じゃあなんで平気になれたのか、については「スキル『闇使い』のおかげ」としか思えないな。
スキルのおかげで『闇』も操作する事が出来たし、それであの大蛇も追い払う事が出来た。
スキル様々だ。
さて、とは言えこのままだと、また変なのに遭遇し兼ねないので、さっさとこの「穴」を登らなきゃなんだけど……。
面倒臭いなぁ。
絶壁と言う訳でもなく急斜面なのだか、手掛かりとなる様な突起があまり無い。
そうとう時間掛けないと登れないよコレぇ。
……もうちょっと洞窟の奥に行ったら、登り易い所とか無いかな?
チラッ。
誰も、居ません、よね〜……?
私は底から続く横穴を覗いて見る。
……。
……カサッ
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
ガッガッガッガッガッガッガッ!!
はあ、はあ、はあ、はぁ……。
何か居たぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!
しかも多分、見たら恐怖で悲鳴上げてしまう系のヤツゥ!!
はぁ、はぁ……。
あ、あれ?
ここ、何処だ?
……。
な、なんか「穴」をちょっと登った所にあった窪みまで来ちゃったっぽい。
アレから逃げるために、無我夢中で走ったからなぁ。
見渡すと、ここから少し上がった所に違う横穴が見える。
あの横穴は大蛇が本来生息しているエリアだろうか?
便宜的に「中層」と呼ぶ事にしよう。
今居るのは下層と中層の中間くらいかな。
……疲れた、ちょっと休もう。
幸い食料も持って来てたようだから、飢える心配は無いし。
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さて、十分に寝て、食事もした。
これからどうするかな……。
ちょっと頑張れば中層まで行ける。
また下層に戻るよりは、中層の方が帰り道が在りそうではある。
しかも、下層にはあの口にするのもおぞましいヤツ等が居る。
おまけに、ヤツ等は下層の『闇』が平気なように順応していると思われる。
だから、出会ってしまったら純粋な戦力勝負となってしまう。
となると、武器とか振るった事も無い、魔術も『闇使い』としてのものしか使えない私に勝ち目は無い。
だけど中層なら?
下層にあった『闇』、……面倒臭いから「毒闇」で良いか。
下層にあった「毒闇」を使えば、中層のヤツ等は倒せる可能性がある。
何せあの新幹線ほどの大きさの大蛇ですら追い払えたのだから、相当強力そうだ。
試しに中層に弱そうな敵が居れば戦ってみたいな。
不利となったら、下層までダイブして逃げれば追っては来れないと思うんだよね。
そうと決まれば、下層から「毒闇」を集めて、中層に殴り込みじゃあ!
**********
えーっと……。
ちょっと戸惑っている。
まず、なんか豚とか羊ほどのサイズで、トカゲのようなカエルのような生き物が一匹居たので、「毒闇」で攻撃してみたのね?
そしたらあっさり昏睡したっぽかったのよ。
そこにさらに仲間らしき同類が三匹来た訳よ。
焦った私は、すべての「毒闇」を放って対抗した。
すると、これまた三匹ともその場に倒れてしまった。
で、十分注意して確認したら、どうやら四匹と即死っぽかった。
ヤバくない?!
えっ?「毒闇」そんなに強いの?
そりゃあ、あの大蛇も逃げ出すわ!
あいつ、あんな図体のくせに、必死に我慢して下層で餌探してたんだな……。
まぁ、これで分かった。
「毒闇」は強い!
あの大蛇クラスの危険生物でも出て来ない限り、危険も無さそうだ。
食料はちゃんと抑えて食べれば半月位は持ちそうだし、焦らず攻略して、出口を探そう!
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結果として、中層攻略は途中で打ち切りになった。
何故なら「穴」から上層まで簡単に登れるようになったから。
では、何故登れるようになったかと言うと──
分からん!!
なんか、中層でモンスターを狩り続けてたら、ある時急に身体能力が馬鹿みたいに向上してるのに気付いたんだよね。
もう食料が尽きかけていて、このままではモンスターを食べるしかなかったから、助かったけど。
もしかして、何かしらのスキルを授かったのかな、これ?
中層で出口を探す中で、なんか「毒闇」を魔術のように自力で放てる事にも気付けたし、結構、得るものが多いダンジョン生活だった。
……乙女としては、色々なものを犠牲にしてしまっていたけれどね。
さて、半月振りにダンジョンの入口まで来れた訳だけど……。
おや?
なんか警備が厳重になってる気がする。
「……あの〜、すみませ〜ん?」
「えっ?……う、うわぁーっ?!だ、誰だ?!」
えっ、ちょっ……?!
警備に当たっていた兵士さんに声を掛けたら、凄く驚かれてしまった。
「えっと、半月以上前にここに入って、はぐれてしまった異世界転移者の一人なんですが……。」
「……はぁっ?!……えぇぇぇぇぇぇぇっ?!」
な、なんかテンション高い人だなぁ。
こうして私は、無事にダンジョンを脱出出来たのだった。