表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

04_穴の底

痛たたたたたたた……。


……えっ?


えっ、なんで私、生きてるの?!

明らかに学校の屋上位の高さの倍以上に高い所から落ちた感覚だったのに。

私は『闇使い』のスキルを使って周囲を見渡す。

うっ、見回すだけでも首や体が痛い!

……でも、なんとなく生き残った理由が分かった気がする。

まず、「穴」の側面が滑らかな急斜面になっていて、ゴツゴツしていない。

そのお陰で、ひたすら転がり落ちる形になったっぽい。

二つ目、底の地面が柔らかい。

砂が大量に積もった様な感じになっており、クッションになったようだ。

今も、私の体がの半分は埋まってしまっている。

三つ目が、食料が詰まったリュック。

これも一緒に落ちていて、同様にクッションになってくれたのだろう。

ただ……、生き残ったは良いけど、体はあちこち痛いし、そんな状態でこの坂を登れるだろうか?


ごほっ!


うっ、なんか息苦しい?!

息を吸う度に苦しくなってる感じ。

体を打ったせいとかで無く、これは…、空気に毒が混ざっているっぽい?

ううっ……。

私は体を横たえたまま虚空に手を伸ばす。

……ん?

なんか……、掴めるほどじゃ無いけど、手に纏わり付くように出来るような?

あ、『闇使い』の目で見たままだから、スキルを使ってる判定なのかな?

この息苦しい空気も「闇」扱いって事?!

試しにスキルを使ったまま、「闇」を掻き集める動作をしてみる。

やっぱり、集められる!

手で掻き集めた箇所の「闇」が濃くなってる気がする。

……いっそ、大量に吸い込もうか?

おそらくここは、サバランさんの言っていた「最下層」だろう。

なら、助けが来る事は期待出来ない。

そもそも、あいつらが私を助けに、わざわざここまて来る筈もないし。

かと言って、この状態では「穴」を自力で登り、地上に戻る事も出来なさそう。

それならいっそ、この世界から離脱してしまおう。

そうすれば、元の世界に帰れる筈だ。

いち早く脱落してしまうのも悔しいが、この上、魔物に見つかって文字通り死ぬほど痛い思いをするよりはマシだろう。


そうと決めたら、私は掻き集めた「闇」を吸い込んだ。


ごほっ、ごほっ、ごほっ!!


く、苦しいっ!

……で、でも、まだ駄目みたいだ。

私はスキルを使って、さらに「闇」を吸い込む。


ごほっ、ごほっ!


……ええいっ、まだか?!

さらに「闇」を多量に、濃くして吸い込み続ける。


こほっ!


……ねぇ、なんか平気になってきてね?

息苦しさも、すっごい湿度の高い中で息をする程度の不快さになっちゃったし。

……あれ?

体の痛みもほとんど無くなってる?

え〜、もしかしてヤバい成分でも入ってるとかじゃ無いよね?

ま、それならそれでも良いか……。


ずり……ずり……


ぞわっ?!

体に悪寒が走る。

えっ、なに?

咄嗟に私は頭上を見上げた。


「……っ?!?!」


私は悲鳴を上げるのを堪えるため、口元を手で塞いだ。

アレに気付かれる訳にはいかない。

頭上には信じられないほど巨大な、新幹線サイズの大蛇の頭があった。


ヤバい、アレ!

あんな巨体で壁を伝って降りて来てる。

…っ?!

そうか、ここはアレの通り道なんだ!

アイツが通るから壁が削られてゴツゴツした所が無いし、削られた小石や砂が底に溜まってるんだ。

くっそ、とにかく体を砂に埋めてヤツに気付かれないようにしなくちゃ。

大蛇は「穴」の底まで来ると、そのまま横穴の方に頭を潜らせて行った。

バレなかったか?

いや、安心するな。

アイツが完全に通り過ぎるまで気は抜けない。


……。


な、なんか、尻尾が全然見えてこないけど……。

あれ?違う?!

胴を残したまま、奥に行くのを止めてしまっている。

ま、まさか……?

…っ?!

戻って来てる?!

アレか?やっぱりコイツにとっても、ここに充満する「闇」は毒なのか?

だから、ほんの少し顔を潜らせただけで、引き上げるのだろうか。

そうやって、獲物を見付けたら襲う感じか?

……お願い、このまま気付かすに通り過ぎて!


……。


ギョロッ。


ダメだぁぁぁぁぁぁぁっ!

完全にこっちに気付いてる!

あれか、蛇は熱感センサーが備わっているってやつ。

私に気付いた上で、他にも獲物が居ないか、一応、見ていた訳か。

ヤバい、噛み砕かれて死ぬなんて、かなりの苦痛じゃんか!

せめて丸呑み、…は無理かな。

サバランさんが「最奥に到達したと言う話は聞かない」と言っていた。

言い方からして、何度か挑戦した人間は居たっぽい。

あの大蛇がどれ位生きてるか分からないが、人間が鉄器を使う事くらいは理解してそう。

となると、丸呑みとはならないよな〜。

念入りに噛み殺した後でないと、飲み込んだ後のリスクが高すぎる。

なら、そうするよな……。


どうする?

一応、武器を持ち、食料が入ったリュックからは距離を取る。

上手く行けば、この食料だけで済んで、私は見逃されるかも知れない。

……まあ、こっちに狙いを定めてるみたいなんですが。

私みたいなの食っても食べ応え無いよ、上に居る男子とかの方がまだ美味しそうよ。

……あいつらは、もう逃げちゃったろうな、この大蛇、先に上を観てたっぽいし。

キョウコの乗ってた子が動かなくなったのも、コイツの気配を感じたせい、だったのかな?


シャアァァァァァァッ!


ひいっ!!

大蛇が口を開けて威嚇してきた。

もう、なんでもいいから抵抗してやるっ!

『闇槍』!


……ボシュッ!


シャアァァァァァァッ!


効いてねー?!

えーと、えーと……。

ああ、頭が近付いて来てる!

ええいっ、来るなっ!

私は『闇』を操作して大蛇に向けて放つことで、押し返そうとした。

自分でもこんな事は意味ないだろうな、とは思ったがヤケクソだった。


──っ?!?!


えっ?

効いてる?

大蛇は目も閉じて、耐えてるような表情になった気がした。

……とにかく効いてるなら何でも良い!


おりゃーーっ!!


気合いを込めたせいか、さっきまでよりも勢い良く、周囲の『闇』を大蛇に向けて放つ事が出来た。

大蛇はとうとう、水中で息が続かず水面まで上昇するかのように、上へと逃げて行った。

助かった?!

いやいや、安心するのは早い!

この隙に、『闇』を集めて周囲を濃い闇で覆っておく。

案の定、大蛇は息を吸ったように、もう一回潜って来た。

そして、再び私を見付けたようだ。

だが、今回は口を開けた威嚇はしてこない。


……フゥ。


一瞬、大蛇の溜め息が聞こえた気がした。

睨み合っていた大蛇は、そのまま上へ帰って行った。

助かった?!

助かったよね、これ?!


ふぅ〜〜っ!


私もやっと力を抜き、大きく溜め息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ