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03_組分け

目が覚めても、そこは異世界だった。

いきなり異世界に召喚されて、いろいろ説明された日の翌日。

周りには十人以上の女子が眠るベッドがあった。

こんなに大勢で寝泊まりするのは今夜だけ。

今日には組分けがされて、前線組、訓練組、待機組に割り振られる。

割り振られると言っても、基本的には本人の意志を汲まれるらしいけど……。

……まだ早いし、もうちょい寝て考えよう。


**********


その後、起きて朝食を食べてすぐ、王様に謁見した。

王様の容姿は、イケオジ?

髭が生えてて、豪華な服を着ていて、王冠を被った正装で会ってくれた。

……なんつーか、サンタクロースが痩せて中年になると、こんな感じになるんじゃないかな?

おっしゃった事は、堅苦しい言い回しだったけど、要約すると「良きに計らえ」。

……そりゃね?

王様に細かな指示まで聞くような事はしないよね。


**********


さて、組分けだ。

私は訓練組にした。

まず、前線組は私のスキルでは力不足だし、危険な所に行きたくも無い。

一方、待機組は本当につまらなさそうだった。

何せ我々勇者は、一応、この国のトップシークレットの一つ。

そのため、無闇矢鱈に動き回る事は出来ない。

その上、ウチらの世界の技術について、この国の技師に延々と詰められるそうだ。

当然、トップシークレットな存在に会うことが出来るのだから、それなりに地位か実績のある技師が来るのだろう。

つまり、オッサン達であろうという事。

半ば監禁された様な状況で、延々とオッサン達と話し続けなくてはならない、と考えると流石に嫌すぎた。


消去法で選んだのが訓練組だった。

まぁ、体動かすのは嫌いじゃないし、せっかくの機会だから魔法みたいなのも使ってみたい。

『聖騎士』ユウスケや『魔導剣士』タクト、『魔道士』ヒトミとかは前線組を選んだみたいだ。

まあ、実戦向きのスキルらしいから大丈夫なのだろう。

意外だったのが『治癒術士』のマリ。

ユウスケと一緒に居たかったのか、前線組に行ってしまった。

そして、『光使い』のコウジは訓練組だった。

正直、嫌だったが十数名の中の一人なら、まあ許せる。


**********


その後の行動として、まず待機組以外は移動となった。

前線組は文字通り前線へ。

私達、訓練組は国が立入禁止にしている森へ。

そこでそれぞれの魔術や武器等の使用方法を学ぶらしい。

立入禁止のエリア内にちゃんと軍用の施設もあるらしい。

なんでその森が立入禁止になっているかと言うと、ダンジョンがあり、危険な魔物が這い出て来る可能性があるから、らしい。

……そもそもダンジョンって何?って話なんだけど。

なんでも巨大な洞窟で、その中で魔物だけの生態系が構築されているらしい。

危険と言っても、普段は軍が管理しているので問題無いとのこと。

……えっ?

スキルの使い方に慣れたら、練習のためにそこに行く?!

浅い階層なら雑魚しか居ないから、練習場所に丁度良いってそんな……。

危険な魔物が這い出て来るなんて十年に一度有るか無いか、と言われても不安なんですが。


**********


ま、私がそんな事を言っても、軍の方達も、クラスの訓練組の人達も乗り気で、行く事になったんですけどね……。

訓練施設で十日くらい練習した私達は、いよいよダンジョンに入る事になった。

一応、軍の方も引率でついて来てくれている。

……さて。


「なんで私が荷物持ちなのよっ?!」

ホンマこれ、くっそ重い!

「仕方ないでしょ?『闇使い』なんて暗視くらいでしか使えないんだから。おまけに見えるのは本人だけなんだから、足元おぼつかないメンツが持つより合理的でしょ?」

大橋キョウコ、『魔物使い』であった彼女が答えた。

でもさぁ……。

「そんなの、そのユタ…なんたらに運んで貰えば良いじゃない?!」

キョウコは巨大な飛べない鳥みたいな生き物の背中で楽に進んでいるのだ、納得がいかない。

「ユタラプトルよ。この子はいざという時に戦ってもらうんだから、重たい荷物持たせるなんて無いでしょ?」

この生き物は、一応、魔物では無いらしい。

本来、引率のサバランさんの使役する生物らしいのだが、訓練のために今はキョウコが乗っている。

「じゃあ、コウジは?!てか、普通は男子が持つでしょこんなの!」

「あ〜、コウジは『光使い』だからね〜。光源役が身軽じゃ無いのも問題でしょ?あと、一応男子でも荷物持ってる奴は居るんだし、文句言わないでよ。」

「言いたくもなるのよ!くっそ重たいんだからっ!」

万が一の場合の食料を全員分。

こんなの重いに決まってる。

あ〜、ストレス溜まる。

こうなったら、魔物が出たら闇魔術を撃ちまくって、発散させてやるっ!


……とは思うものの、あれから全く魔物が見当たらなかった。

「おかしいなぁ。いつもはこの辺りまで来れば、何かしらの魔物と出会うものだか?……もう「穴」の所まで来ちゃったよ。」

ここへ来た事のあるサバランさんが、不思議そうに言う。

やだなぁ、それって何かの前兆なのでは?

「サバランさん、「穴」って何ですか?」

キョウコが聞く。

「ああ、すぐそこに大きく深い縦穴があるんですよ。調べては無いですが、最下層まで続いてるんじゃないかと言われています。」

「最下層って、……何かあるんですか?」

「一般的にダンジョンでは、下に行くほど強力な魔物が居るとされています。大昔にこのダンジョンも調べようとしたらしいのですが、最奥まで行ったと言う話は聞きませんね。とにかく、強い魔物が居る場所と繋がってる可能性のある穴、ってとこですかね。」

「へぇ……。どれどれ……、うわっ?!」

ん……?

キョウコの乗ったユタラプトルが、体を小さくしている。

「ちょっと、どうしちゃったの?」

「おや?おかしいなあ。好奇心旺盛で積極的な子なんですがねぇ?」

ユタラプトルは二人掛かりでも動く事無く、一旦、休憩となった。


「うっわぁ……。」

件の「穴」を覗き込む。

大きな池くらいの大きさの空洞が、先の見えない奥底まで続いている。

空気の流れはありそうで、下から何とも言えない匂いの風が上がって来ていた。


さわっ……


「ひやっ?!…な、なに?!」

体を触られた感触で咄嗟に振り返ると、コウジと他に二人の男子に囲まれていた。

「な、何するのよ、アンタら!」

「いやぁ、普段の仕返しをしようかなぁ、とな。」

コウジ達はヘラヘラと気味悪い笑みを浮かべている。

「はぁ?!何言ってるのよ、変態っ?!」

「どうせ、元の世界に戻れば記憶は無くなるんだろ?なら、やりたい事やったって良いだろ?」

くっ…、こいつ、一人じゃないと調子に乗りやがって!

「そんなの許される訳ないでしょ?!みんな、助けて!」

私は周りの訓練組の皆に助けを求めた。

……。

えっ?なんで誰も動かないの?

「いや、だってサトコの普段の行いが悪すぎるよ。そりゃあ、味方したくも無くなるって。こっちにくる直前の事もあったし。」

至って平静にキョウコが語る。

「そんなっ……。サ、サバランさんはっ?!」

「いやぁ、私共は皆様をお護りするよう言われていますが、皆様の間でのトラブルには口を挟むなと言われてますので……。」

何それ、まともな大人がそんなんで良いのか?!

と、言っても助けて貰える訳もなし、ああっ、もうっ!!

「ああああっ、もうっ!ヤケよ!『闇槍』!!」

私はコウジに向かって魔術を放った。

自分の身は自分で守る!

「なっ?!『光槍』!」

コウジも負けじと魔術を打ち返してきた。


カッ!!


うわっ!

魔術同士が衝突して衝撃波が来た。

私の体が軽く後ろに飛ばされる。

……ん?後ろ?


ふわっ


軽い浮遊感の後、重力を感じた。

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁっ……」


私の体は「穴」に飲み込まれていった……

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