99_エピローグ
【某掲示板のとあるスレッド】
「──それからは当然、学校にも行けなくなって、かれこれ数年、ずっと引き籠もって今に至る感じ。」
「ほえぇ、なかなか大作やったな。面白かったやで。」
「そうか?いかにもな話に思えたわ。」
「まあ、……一昔前に流行ったやつ感はあったな。」
「まぁ、別にどう思われようと良いけど。どうせ、証明も出来ないし。」
「なぁ、イッチ。引き籠もってるって、親御さんが何か言ってきたりしないんか?特に、親父さんは厳しいって言うか、残念な感じが話の節々に出とったが。」
「ああ。そりゃあ、言ってきたわよ?でも、いい加減うざかったし、死にものぐるいで張り倒し返してやったら、それから家には寄り付かなくなったわよ。」
「おおう……。まあ、異世界じゃもっと過激な事しとるらしいし、そんぐらいは余裕か。」
「でもさ、そしたらなんでここで話したくなったんや?何年も経った今頃なななって。」
「う〜ん……。なんとなく、誰かに聞いておいて欲しかったのよ。」
「ふぅん?」
「ずっと疑問だったのよね。魔王・星井ジュンコは、なんで私に、スキル『記憶保持』を付与したのか。」
「ああ、言われてみれば、確かに。」
「実は悪意アリアリだったとか?言うて勇者やったんやろ、イッチは?」
「それもあるかもだけどね。でも今の私なら、なんとなく分かる気がするの。アイツはもう、こっちの世界には戻って来れないのよ。戻って来ても、もう寿命はほぼ尽きてるんだもの。」
「……そっか、3回目の召喚の時に来たんだから、最短でも20年。途中、ゴタゴタがあったのなら、簡単にその倍以上は行くか。」
「そう。だから、誰かこっちの世界の誰かに覚えていて貰いたかったんだと思うの。……魔王も私の同類だったから。」
「……ちょっと待て、イッチ。つまり、どう言う事だ?まさか、変な事考えて無いよな?」
「は?何をいきなり言っとるんだ?」
「文盲かよ。つまり、おそらくもう生きてはいないだろう魔王が、イッチに覚えてて欲しかったように、イッチもワイらに覚えて欲しがっとる、と言うことや。」
「は?!何でや、イッチ!」
「……何か、疲れちゃったのよね、もう何もかも。アンタ達とこうして話してるのは楽しいけど、それはさ、きっと「決めちゃってる」からだと思う。」
「楽しいなら、それでええやろ!引き籠もりかて、そんなのここの奴らは大半がそんなもんや。それを馬鹿に出来る奴なんて、ここにはおらんで?」
「なんか必死やんな。」
「やっぱスレ民は女には優しいな(笑)」
「アホか、茶化すな。別に嘘ならそれでええんや。でも、もし仮にホントになったら目覚めが悪いやんか。」
「別に信じて貰えなくても良いんだけどね。ありがとう。」
「イッチは趣味は無いんか?」
「野球とかオモロいで、見てるだけでも。」
「アニメや特撮の話なら無限に出てくるで、ここの奴らは。」
「ううん、良いかな。小さい頃からあんまりそう言うの、見せてもらえなかったし、あんま興味無いんだよね。」
「う〜ん、だめかぁ……。」
「逆に、何か興味持ってる事とか無いんか?」
「いや、もういいよ。みんなありがと。さようなら。」
「おい、待ってイッチ!」
「まあ、良いやろ。話し終わったから抜けたんやて。」
「構ってちゃんにしちゃあ、手が込んでるけどな。」
「なぁ、別に話すことなんか無くても、駄弁っててええんやで。どうせオレら、暇なら余すほどあるんやから。」
「そうそう、オレらの駄目さ語ろうか?イッチなんてまだ可愛い方やで。」
「……なぁ、イッチ。」
「サトコ!まだ見てるんでしょ?私よ、マリよ!お願い、もっと話しよう?」
「おい、流石に胸クソ悪いわ。なりすましは止めとけや。」
「───」
「──」
……
……
「見てるぞ。」
……
「支援。」
……
**********
「……イッチから返事が無いなって、もう3週間か。」
「お互い、暇人だなぁ。」
「まぁ、イッチのあの最後の感じは心配だったしな……。」
「おっ?まだ見てる人おったんか。」
「乙〜。」
「おるよ〜。」
「かぁっ、そんな健気なヤツラに、ちょっとした追加情報を投下したるわ。」
「は?なんだ急に?」
「おい、まさかイッチか?」
「残念ながら、ちゃうで。イッチの言ったことが気になったんで、自分なりに調べてみたんや。」
「へぇ!」
「なんか分かったんか?」
「ちょっと、このリンク先見てみ?⇒【リンク】」
「……えっ?!「大里コウジ」の死亡記事?」
「おいおい、本名やったんか?!」
「あと、これもな。⇒【リンク】」
「あ〜〜っ!そっか、そうだよなぁ!」
「コウジ君があるなら、魔王もあるよな、そりゃあ……。」
「そ、星井ジュンコ。この2人、7年前の同じ時期に亡くなってるんだよ。」
「……イッチの話は本当だったってコトか?」
「それは分からんな。……でも、創作だったとしたら、この2人の記事を見つけて、話に入れ込んだことになるだろ?流石に不謹慎過ぎないか?」
「せやな。星井ジュンコに至っては、スタージュンやからな。ちょっとやり過ぎだわ。」
「逆に、それほどやり過ぎる人間なら、心配してやらなくて良いんじゃないか?」
「まぁ……な。」
「う〜〜ん……。」
「でもさぁ、誰かが言ってたが、仮に本当にあった事なら、少なくともそう思い込んでる人間が居るなら、何かしてやりたいやんか。オレらに出来る事なんて何も無いけど、暇だけは余すほどあるんやしな。」
「そうなぁ、イッチがホンマに女なら、騙されてたとしても、まぁええしな。」
「……なぁ、ちょっとウルッときたわ。……あのさぁ、ホントはこれ、出すつもり無かったんやけど。⇒【リンク】」
「は……、あ、これ、林……。」
「おいおい、この事までイッチは知ってたってことか?」
「いや、よく見ろ。警察発表は一昨日だ。10日以上前にこんな事を知ることが出来たのは、家族か知り合いか、……本人だけだ。」
「……友達、居なさそうだったな、イッチ。」
「家族仲も、たかが知れてる感じやったな……。」
「だな……。」
「イッチ……。」
ここまで見ていただきまして、ありがとうございます。
当物語はこれで終了となります。
別で続き物のお話も書いておりますので、ご覧いただけますと幸いです。
※※【注意】この先はネタバレを含みます。本文をお読みになってからご覧ください。
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はい、「サトコの」ざまぁ奇譚でした。(……「ざまぁ」になってるか、これ?)
終わり方に関しまして、この話ではどうなったか敢えて言わないスタイルとさせていただきました。
・他の人と同じ末路となったか
・ただ事件を起こしただけで、その後の更生の機会があるのか
・そもそも、最後のスレ民の持ってきたリンクは全て関係無いものだったか
・根本からして、とあるスレ民の創作だったか
・もっと別の想像を巡らすか
多分、本編の受け取り方によっても人それぞれ変わると思いましたので、記しておきます。
※※【注意】この先はメタ発言を含みます。
「話の雰囲気をぶち壊すな!」という方はお読みにならない方が良いかもしれません。
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まぁ、たいした話じゃないのですが、この話のコンセプトですね。
プロローグでもちょっと書きましたが、この話は解説動画などを見た際に閃いた内容を話にしたものとなっています。
すなわち「一般的に嫌われるとされる「なろう系主人公」が、ざまぁな結末になれば、皆納得できるんじゃね?」という事です。
曰く、読者はストレスを感じ続けた後に、ストレスの原因となる者が悲惨な末路を辿ることで、カタルシスを感じる、とか。
なら、そのストレスとなる原因を、嫌われ者である「なろう系主人公」に担ってもらえば良いじゃない、と考えたわけです。
まぁ、私が知らないだけで、そんな話は既にいくらでも在るのかも知れませんが……。
とにかく、そのコンセプトのため、主人公のサトコちゃんには「なろう系主人公」らしい事をいろいろやってもらいました。
・自分本位の理不尽な性格。
・ダンジョンのどん底から生き延びる。
・貰い物であるはずのスキルでイキる。
・突然のサイコパス、大量殺人。
・トロフィー異性の獲得。
とか?他にも無意識でさせていたかも知れませんが。
ただ、書いていて困ったことに、話を進めていくうちに作者は主人公のモンペと化す、ということを知ってしまいました。
最初からこの結末も考えていたのですが、若干、弱くなった感すらありますからね。
あと、話がセンシティブな方面にも触れちゃってるため、サトコちゃんの行動も已む無し、と思う人も出て来ちゃうかなぁ、なんて思ったりもしました。
男性と女性、似たような経験の有無によって、受け取り方が結構違うことになりそうで、もうちょっと単純なバカ主人公にしておいた方が、コンセプト通りになったかなぁと反省しております。
小説の書き手として、拙さが露呈してしまった形となりましたが、これに懲りず、もう一方のお話も楽しんでいただければ幸いです。