第三話 疑問
この日は学校に遅刻した
ようやく校門に着いた。もう一時間目は始まっているようだ。
「はぁ…月曜日から遅刻か?」
先生が呆れて言う
「……すみません」
(こいつ…普段は馬鹿なくせにこういう時だけ調子に乗りやがって…)
「あぁ?なんだその不満そうな目は?まるで俺の事を普段は馬鹿なくせにとか思ってるような…」
「ゲッ」
(しまった、つい変な声が出てしまった)
「ゲッて言った!え?ホントにゲッて声に出る人いるのか…」
「あの……もう教室行きたいんですけど」
「あ、そうだったな。すまんすまん。って!ゲッてなんだよ!やっぱ普段は馬鹿なくせにとか思ってたんじゃねぇか!!あれ?もう居ねぇじゃん…!」
教室の前に着いた。
(はぁ、無駄に時間使っちまった、早く教室に入らなきゃ)
さっきの先生は青木先生と言って俺のクラスの担任で体育の担当だ。別に嫌われてる訳でも嫌いな訳でも無いがたまに鼻につく。なんせ普段はアホ丸出しの天然男なのだ。裏ではアホ木と呼ばれている。本人は気づいていない。
俺は教室のドアを開けた。今は数学の時間のようだ。
「あ、遅れてすみません…」
「らい!!!」
大きな声が教室に響いた。真理だ。
彼は俺の中学からの友達で高校では大体いつも一緒にいる。良い奴なのだが空気が読めない。典型的なバカだ。
「らいー!!遅いから心配したぞ!!お腹でも壊したのか??」
またも大きな声が教室に響く。
(今…授業中だよな……)
「」
「あ!無視した!ひどい!傷つく!」
「……」
俺は黙って自分の席に座った。
休み時間になった。
(しまった…お弁当忘れた……)
真理と優子が俺の席に近づいてくる。
「……おはよう」
俺は恐る恐る言った。
「おはようじゃねえよ!お前さっき無視しただろ!心配を返せ!」
(思った通り……真理は怒っていた)
「ごめん、でも、授業中だったし、」
「らいくんは悪くないよ」
優子がすかさず言ってくれた。
優子は小さい頃からの幼なじみだ。普段はすごく優しくて頼れる存在。でも怒ると誰よりも怖い…
「優子までらいの味方か?……」
真理は不満そうだ。
「それで、今日どうして遅刻を?」
優子が話を変えた。
「それがさ、博士と少し言い合いになっちゃって……気づいたら時間が…」
(本当はほとんど2度寝のせいだけど……まぁ嘘では無いしな)
「え!ドロロン博士と?なにがあったの?」
優子が驚きながら言う。
「実はさ、博士がなにか俺に隠し事してるっぽいんだよね。」
「隠し事?」
真理が反応した。
「お、真理ー?もう機嫌は治ったのー??」
優子が嫌味っぽく言う。
「うるさいな!無視の件は僕の寛大な心で許してあげることにしたんだ!切り替え切り替え。それより隠し事って?」
(こいつ…話が気になるからって俺の事許すことにしたな……分かりやすいやつめ)
「それは……まだ分からないんだ」
「まぁそりゃ分かってたら隠し事じゃないわよね。」
ごもっともだ。さすが優子。
「なんだそれ。じゃあ博士に隠し事があるってなんで分かったの?」
真理にしてはまともな質問だ。
「……勘」
俺は自分の行動を振り返った結果、この言葉以外答えることが出来なかった。自分でも驚きだ。まさかただの勘だけでここまで疑問を大きくしていたとは。でも…やっぱりモヤモヤは晴れないままだった。