第一話 晴天
胸騒ぎ…モヤモヤ…自分の心拍数が上がっているのが分かる…「誰かが俺を呼んでいるのか?」
………
〜6月3日〜
今日は数十年に一回起こると言われている雷の雨が降る日だ。雷雨じゃない。雷の雨だ。この雨が降る原因も性質も何一つ分かっていない。云わば謎っていう奴だ。
小さな雷の粒が無数に振りそそいでいる。
「ほんとに降ってる……」
窓を眺めながら言った。噂には聞いていたけど実際見てみると、まるで異世界にでも来たかのように、なんだか不思議な気分だ。
「うおーーー!!!!!!」
静寂を切り裂く叫び声。…博士だ。
「らい!!見てみろ!!凄いぞ!雷の雨だ!!本当に降ってる!!!!!すごいすごーい!!」
この人はドロロン博士。俺の育ての親だ。昔俺が捨てられていたのを拾ってくれたらしい。もちろん感謝しているし間違いなく恩人だ。ただ…
「……うるさい」
「なぬっ!?…らい!もっと興奮せんか!!こんな景色、もう二度と見れないかもしれないんだぞ!数十年に1回なんだぞ!」
博士の興奮は冷めない
「でも、博士はべつに初めてじゃないんだろ?なんたってそんなに興奮するんだよ。」
呆れながら言った
「そうは言っても人生で2回だぞ!落ち着いてる方がおかしいぞ!」
…確かにそうかもな。俺は心の中で頷いた。でも、なんだかワクワク出来ない、なんでだろうか。
モヤモヤ…俺はこの時から、いやずっと前から自分の中の胸騒ぎを確かに感じとっていた。
「ちょっと外に出てくる」
俺はドアに向かって歩き出した
「何を考えてる!外は雷の雨だと言っているだろ!ピリッとするんだぞー痛いぞー」
博士は脅すように言った。
「あぁ分かってる。少しだけだから」
「待て!ぁぁ、本当に少しだけだからな!」
…俺はドアを開けた。窓越しで見るよりも凄い。
玄関から外を眺める。
なんだろう…やっぱりモヤモヤする…
胸騒ぎ……モヤモヤ…自分の心拍数が上がっているのが分かる。「誰かが俺を呼んでいるのか?」
思わず外に出た。思ったよりも痛くない。というより…心地良い……
「なんだ、これ…」
ずっとここにいたいと思うような、心地良さ。雷が俺を暖かく包み込んでくれる、そんな気がした。
その感覚はまるで晴天だった。




