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8.相棒の名は


「え、人生を、やり直せたって……」


 俺が目を見開いていると、眼鏡の男は少しだけその口角を上げながら更に聞いてきた。


「さっきのクイズでさ、『一回目は』岡本太郎って書いて間違えたけど、『二回目は』雪舟って答えて生き残った人――つまり僕と同じかどうか? って聞いてるんだけど」


「え、っと……」


 しばし返答に時間がかかる。そうだ、その通り。確かに俺は〈幽冥の聖騎士〉によって生かされた――が、何故それをこの男は知っているのだろうか。


「あれ、もしかして違った? だったら他の仲間を探すだけなんだけどさ」


 眼鏡の男は肩をすくめて、踵を返す。そしてこの場から去ろうとする……が、俺はそれを止めた。


「や、やっぱり待って」


 彼が振り返る。


「んん? どうした」

「俺もだよ……俺も、一度間違えたけど生き残るという選択肢を選んだ――いや、選べた。お前の言葉を信じるとするなら『お前と同じ』だ」


 素直にそう言って相手の出方を伺う。すると眼鏡の男は少し考える素振りを見せてから、ニンマリと笑った。


「やっぱりそうか。僕と同じ」

「お前も……なのか。ってか、なんで俺が、その……二回目での正解者だって分かったんだ?」

「え、さっきの広場でさ、気づかなかった?」


 彼は首を傾げる。


「僕、君の席の斜め前だったんだけど」


 ……そういえば、席から周りを見渡したときにこんな奴が居たような居なかったような……。記憶を呼び起こそうとする俺を見ながら、彼は更に続けた。


「僕もさ、一問目間違えたんだ。それで返ってきた判定を見て驚いて……辺りを見渡したんだ。そしたら斜め後ろの君も変な顔してたから、ああこの子も同じなんだなって思って」

「変な顔って……」

「大丈夫、大爆笑はしなかったから」

「いや謎のフォロー求めてねぇよ」

「ってのは、さておき」


 さておくなよ。


「それで僕も一度は死んだ……だけど君と同じく〈幽冥の聖騎士〉に言われて時間を戻されて。それで正解した後に辺りをもう一回見てみたら……君も、ちゃっかりそこに居たからさ」


 これは声をかけるしかないなって思って。


 彼はそう、話を結んだ。


「そうだったのか……」

「うん。でも、戻ってくるからには、こう思ったんだ」


 俺には、彼の言わんとしていることが分かった。


「この世界の謎を解き明かしてやる、だろ?」

「いや、違うね」


 ……分かっていなかった。


「じゃあ、なんて思ったんだ?」


 俺の質問に、彼は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「この世界を、ぶっ壊してやる」

「……ぶっ壊す」

「あは、そう。僕は見た目に反して問題児なんだよね」

「まあ、確かに眼鏡をかけているところからも真面目ガリ勉にしか見えねぇ」

「よく言われる。……んでも、思ったんだ。理不尽なこの世界に突然来てしまって以来、馬鹿げたルールを仕方なく受け入れていたけど……それは間違ってるよなって」

「それは俺も思ってた」

「よし、方向性が合致したね」


 俺と彼の視線が絡み合う。


「この謎の異世界を、ぶっ壊して元の世界に戻る。これが最終目標だ。あ、そうだ、名乗り忘れていたね。僕は斑鳩久遠(いかるが くおん)。君は?」


「神尾来翔だ」

 

 彼――斑鳩久遠が、俺の方へ手を差し出してきた。


「じゃあ、来翔。僕と、この世界の謎を暴いて一緒に元の世界に戻ろう」

「ああ、よろしく」


 かたく、手を握り合う。こうして俺の――いや、俺たちの物語は始まった。

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