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7.できた仲間は


 死を与えられた筈の俺に起こった奇跡――〈幽冥の聖騎士〉による気まぐれか、はたまたそうでないのかは分からないが、とにかく俺は救われた。この世界での死を、つまり「永遠の消失」を免れた。


 彼に言われた通り、俺は問題をきちんと聞いてから「雪舟」と入力した。そして、送信。あっけなく俺は「正解」認定を得て、他の、時間を戻してもらえなかった不正解の住民たちのどよめき、怒号、叫びを聞いた。


 きっと俺も、さっきまでなら「そちら側」だったのだろう。卑怯な手法に引っかかって、世界から消えねばならなかった住民の一人。だけど“そうじゃなくなったからには”。


「俺は、この世界の謎を解かなければならない」


 小さくつぶやき、決意する。こんな馬鹿げた世界の存在する意味、俺が〈幽冥の聖騎士〉に生かされた理由、そして元の世界に戻る方法――――溢れかえっている矛盾と疑問を全部、解決してやる。


 クイズ会場から、半数ほどの人間が“消された”ところで再び不快な〈幽冥の聖騎士〉の声音が響いた。


『さて、諸君。今日のクイズはこれで終わりだ。次のゲームに備えて沢山の知識を身に着けておいてくれたまえ。一度に仲間が多く消えてしまうのは――私としても、悲しいからな。それでは、解散』


 俺は椅子から立ち上がり、帰路につく。感覚が、麻痺しているような気がする。さっき「消失」しかけたからだろうか、それとも時空を遡って過去に戻ったからだろうか。また身勝手なことを言いやがった〈幽冥の聖騎士〉に対しての怒りも、会場から沢山の人の気配が消えた虚しさや侘しさも、何もかもが薄れていくような。


 だから背後から肩を叩かれたとき、びっくりして。久しぶりに自分の中に感情のゆらぎというものが戻ってきたような心地がして、大げさな反応をしてしまったんだ。


「ねぇ、君」

「うわぉ!?」


 素っ頓狂な悲鳴が、俺の口から飛び出る。この世界で人から声をかけられることなんて珍しいから、余計その声は俺を飛び上がらせた。


「なんですか!?」


 振り向こうとして、勢い余って一回転する。慌てて俺はもう一度、今度はちゃんと半回転して、声の主の方を向く。――そこに、立っていたのは。


「そんなに驚かなくてもいいのに」


 ラフなパーカーにジーンズを合わせた出で立ちをしている、俺と同い年くらいの眼鏡の男だった。苦笑している彼の表情からは何も怪しいものは見て取れない。


「あのさ突然でごめんなんだけど、もしかして君も」


 眼鏡の男が、俺の顔を覗き込んで尋ねた。


「『もう一回』人生やり直せた人?」


 これが、俺と“相棒”との出会いだった。

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