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16.久遠の残した手がかりは


 たった、二日だった。


 斑鳩久遠と過ごした時間は、たったの二日。


 つい一昨日出会って、世界の謎を解くために同盟を組んで、友達になって、作戦会議して、【暁の層楼】潜入大作戦を考えて――それで昨日、作戦実行してさ。


 でも〈幽冥の聖騎士〉にバレてつまみ出されて、でも作戦大成功だって笑い合って……だけど、そこでの思わぬ発見によって、久遠は『壊れた』。そしてそのまま『自分の意志で』世界を去っていった。


 なんで久遠の意志だって、分かるかって――?


 だって、昨日の問題は驚くくらい簡単だったから。


 実質試されているのは、知識量じゃなくてノーミスで回答を送る速さ――そう言えるくらい、簡単だったから。だからきっと、彼は自分の意志で間違えたんだ。――彼が居ない今、もう、そう信じるかない。


 


 久遠と過ごしたたったの二日。

 でも、一緒に居られた時間は短くても――友人の『残したもの』は大きかった。


 この世界の謎を、解けるかもしれない。



 *



 俺は久遠が居なくなった翌日、ずっと考えていた。

 脳裏によみがえる言葉の数々。

 それを、ジグソーパズルのピースを一つ一つはめるように、組み合わせて。



 まず、俺が不正解したときに〈幽冥の聖騎士〉が言ってきたこと。


 ――クイズに正解して正解して正解して……生き残って。その先に、理由にしろ意味にしろ、君の探し求めているモノがあると思うよ

 ――生き残れる強者だけが辿り着く境地。そこまで、おいで。


 生き残ったその先に、俺の探し求めているものがある。たぶんこれはこの世界に生きるすべての人に言えることだと思う。


「俺たちは、何かを求めてこの世界に居るんだ。」


 

 そして久遠の言葉。


 ――どうして僕だけ……いつもいつもこの世界から脱出しようとしても、『迎えに来ないんだ』!? どうしていつもコイツなんだよ……!


 久遠の口ぶりからは、まるで前にも同じ状況があったかのような様子が感じられた。俺はこの世界に来たのも一回だけだし、【暁の層楼】に入ったのも初めてだった。だけど久遠は違うのかもしれない。つまり。



「この世界には、何度でも来られる?」



 だとしたら、久遠が自分からクイズに不正解して世界から消えた理由も少しわかるかもしれない。俺は、経験がなかったから、最初「岡本太郎」で間違えたときに凄く焦って、消滅を恐れた。だけど――もしこの世界に『何度でも来られるのだとしたら』。消滅が、この世界から『撤退する』という意味合いのものなのだとしたら。


「久遠は、またこの世界に来られるってことを知っていたから、消えることを恐れなかった」



 でもたぶん、同じ世界から出られるという状況だとしても「消滅」と「脱出」は違うはずだ。じゃないと、久遠がこの世界を壊したいって思うほど、脱出にこだわる理由がなくなってしまうから。


「つまり俺が目指すべきは『脱出』――それが、あいつの言っていた『求めているもの』ってやつか?」

 


 さらに、久遠が嫌悪の感情を顕にしていたアイツ――画面に映っていた白衣の男。久遠が彼を見て放った言葉は「どうしていつもコイツなんだよ……!」。ってことは、会ったことがある、面識があるってことだ。


 確か向こうからも、カメラを見ただけで『斑鳩くん』って呼んでいた……これは推測だけれど、もしかして白衣のやつは、久遠がこういう機械を操れることを知っている……?


「白衣の男は、久遠の『元の世界』での知り合いなのではないか?」


 


 元の世界の知り合い……、あれ、待てよ。




 【暁の層楼】は、久遠の予想が正しいとすれば『この世界の中枢部』。だからもしかしたら『元の世界』とも繋がっている可能性が高い。


 そこに居た白衣の男は、久遠の元の世界の知り合いっぽかった。


 そいつ、こっちのカメラに気づいたとき

 ――――なんて言っていた?







 『社会に戻ってくる気になりましたか……? 

 多くの人が君のことを待っていますよ?』







 俺たちは元の世界に戻る方法を探るため、【暁の層楼】を調査した。だってそこを探れば何らかの手がかりが得られると思ったから。


 俺たちは、そう、元の世界に戻りたかったんだ。

 

 脳内に反響する男の声。


『社会に戻ってくる気に……』



 元の世界、は、『社会』――?





 その結論にたどり着いた瞬間、俺は全てを悟った。フラッシュバックする、はるか昔の記憶――。

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