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厄介ごとならザッカーマン傭兵事務所へ  作者: サカトウ
Case4.『404』
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07.螺旋

 『全部隊に告ぐ。ユニオン運営本部から最優先の依頼アリ。基地内部に侵入中のアリシア・ザッカーマンを抹殺せよ。繰り返す――』


 館内放送が、幾度も繰り返されている。

 サーバー室の中でただ一人佇むザッカーマンにも、その内容は聞こえている。

 アイの居たパネルには、ユニオンでPMCの先駆けとなった『ハウンド社』のロゴが映し出されている。『屍の山に佇む一匹の獣』それは、硬貨に刻印された紋様と全く同じモノだった。


「推測は確信に変わった…協力に感謝するわ。私の友達だったヒト」


 バズンッ


 撃ち抜かれたパネルがひび割れて、極彩色を放つ。

 そこにはもう、ザッカーマンの友は居ない。

 ここには、敵しかいない。

「ギギィ…」と背後の扉が開く音がした。それに、数人の足音も。

 

「ザッカーマンさん、できれば貴女を――」


 バズンッ、バズンッ


 名前を呼ばれた彼女は振り向きざまに、なんの躊躇いも無く引き金を引き、元同僚達を撃ち抜いた。血の海に倒れた、彼らのヘルメットを脱がし一人づつ顔を確認する。


「既に抹殺命令は下された。敵なのよ私は…。アナタ達は甘すぎるのよジェイド、タリア…それにマーシュ」


 彼らの服や装備を剥ぎとり、彼女はそれらを身に着けていく。

 さらに、チェストリグにマガジンを詰め、自動小銃を手に取った。

 これでプロテクト社の兵士とは、見分けが付かなくなった。

 自動小銃のコッキングレバーを引いて初弾を装填すると、彼女は開かれた扉の脇に張り付き、点検鏡を取り出し外の廊下を索敵する。


「左右に三人ずつ。フォーメーションDか」


 ザッカーマンは小さく呟くと扉を閉めて、反転し地面に伏せ死体を自分に覆いかぶせた。

 

――パリンッ、カラカラ…


 サーバー室の窓ガラスが割れ、何かが中に転がり込む。かと思うと、耳をつんざく破裂音の後に閃光が走る。ソレをやり過ごした彼女は死体を退けて、すぐさま窓の脇に張り付いた。

 すると、ドンッと扉が蹴破られるのと同時に、窓から敵が二人躍り込んできた。


 ダダッ、ダダッ!


 窓から侵入した敵を、ザッカーマンは背後から続けざまに撃つ。

 一人は頭を吹き飛ばされ、もう一人は足を撃ち抜かれた。


「うがぁ!」


 片膝を着いた生き残りから、銃を奪って背後に回り込み、脇の下から銃を入れて無理やり立たせて、盾にする。どうにか、廊下の部隊が突入するのに間に合った。

 サーバー室の中に突入した六人の敵兵と彼女は、盾を挟んで睨み合いとなる。


「ザッカーマン、そいつを離せ! どうせ、ここからは逃げられはしない!」

「その声は…クインゼルね。残念だけど、そうはいかないわ」


 ダダダダダッ!


 同僚ごと抹殺対象を殺す。

 その判断が出来なかったクインゼル達は、ザッカーマンに皆殺しにされた。

 そして、彼女は盾にしていた兵士を喉に腕を回し、首を絞めつける。

 ジタバタと腕を振り払おうとするが、抵抗虚しく兵士は崩れ落ちた。


 サーバー室には、むせかえる程の死臭が充満している。 

 生者にしか嗅ぐことの許されないその香りを、ザッカーマンは胸一杯に吸い込み、長々と吐き出して思考を整理した。


「屋内戦の多対一。それでも、半数以上は下層街に駆り出されているはず。それなら、次の一手は――」


 遭遇戦を避け、検問所に集結して退路を塞ぎに掛かる。

 安牌を打ちたがるザーシャならば、必ずそうする。


「間抜けね。だから、やたらと部隊員を死に追いやるのよ」


 そう独りごち、気絶した兵士を担ぐと彼女は窓辺に近づき、屋上から垂れているラペリングロープを掴んで、一気に地上へと降下した。

 状況的には、負傷した味方を担いで、撤退しているようにしか見えない。そして、彼女の狙い通り、検問所で待機していた部隊が突出し、撤退の援護のためにサーバー室の窓を撃ち始めた。

 その援護部隊にザッカーマンは必死に駆け寄り、部隊長らしき男に現状報告をする。


「ロイヤーと、私以外は全滅だ! ザッカーマンは、恐らく武器庫を目指している。検問所を、吹き飛ばすつもりなんだ!」

「射撃中止! 私は、総司令に指示を仰ぐ。お前はロイヤーと共に後退しろ!」


 ザッカーマンは力強く頷き、検問所へと撤退すると、待ち受けていた救護班にロイヤーを受け渡した。彼の懐に、ピンを抜いた閃光手榴弾を仕込んだままに。


――キーンッ  


 数十秒後、高音と共に検問所は閃光に包まれる。

 兵士達が混乱する中で、それに乗じて彼女はプロテクト社から脱出した。


 兵士の一人が、上層街の大路地へと逃れていく。

 その光景をザーシャ・アメルンは、最上階の社長室から見下ろしていた。

 だがしかし、彼女は無線でその兵士を追うように指示するわけでもなく、ただ愛用の煙草をくゆらせるだけだった。 


「これで、貸し借り無しよ。ザッカーマン」


お読みいただきありがとうございます。

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