06.混沌
「アレ?」
マンションから出て、ハイウェイに乗ろうとしたところで異変が起きた。
いくら待っても、ゲートが開かないのだ。
もしかしたら、通行権の期限が切れているのかもしれない。
そう考えたジンは、後続車に先を譲ったところで、ジンは違和感を覚える。
「信号機が点灯してないな」
ハイウェイの出入口のすぐ後方に交差点があるのだが、そこの信号機の電源が落ちていた。
突発的な故障だと思った彼は、デバイスで車両の通行権を確認しようと、ネットワークにアクセスを試みる。しかし、デバイス上には『ネットワークに接続されていません』と表示されてしまった。
――ドンッ
轟音が鳴り響いたかと思うと、目の前の交差点で衝突事故が起きていた。
側面に衝突され天地が逆転した機体からは、火の手が上がり始めている、このままでは燃料タンクに引火して爆発してしまうだろう。すぐさま駆け寄ってみると、シートベルトにもたれ掛かる格好で、ドライバーが気絶していた。
野次馬が遠巻きに集まり始めるが、誰もが爆発に巻き込まれることを恐れ、彼を助けようとする者はいない。それでも、ジンにはドライバーを見捨てることができなかった。
ダンッ、ダンッ
彼は拳銃を引き抜くとなんの躊躇いも無く、フロントガラスに向かって発砲する。
着弾した弾丸が小さく爆発しガラスが砕けた。
ジンは身を屈めて運転席まで進入し、どうにかシートベルトを外すことができた。
拘束の解かれたドライバーを、ジンは外まで引きずり出すと、彼を抱え込んで駆けだした。
――ドゴォーン!
その直後に、機体が爆発した。
熱風が背中を焼くが、どうにか一人の命を救うことができた。
「おい!この人を介抱してくれ!」
彼の一声で、遠巻きに見物していた野次馬達は目を覚ます。
ドライバーのために地面に上着を敷く者や、自分のホバークラフトから応急キットを取り出す者、他にケガ人がいないか声を掛ける者が現れ始めた。その中から、数人がジンに近寄ってくる。
「さぁ、ケガ人をコチラに!」
「分かった。頭を上にして…慎重に…」
彼らはジンからドライバーを受け取り、丁寧に地面に敷かれた上着の上に寝かせると、応急手当を始め出した。これなら、彼の事を心配する必要はないだろう。
ふぅとジンは一息つき、体に刺さったガラス片を抜いていく。
「貴方もケガの手当を」
スーツ姿の男性が近寄ってきたが、ジンは手を振って断った。
これぐらいのケガなら、手当の必要もないだろう。
今や、上層街の至るところから黒煙が上がっている…下層街からでも見える程に。暴徒達は、これを好機と捉えるだろう。そして、ハイウェイは激戦地になるだろう。
最悪の場合は、治安維持部隊が高架を爆破して、下層街とのアクセスを遮断する可能性もある。だが、隊長が今も下層街に居るとしても、彼女もその可能性を考慮して、必ずコチラにやって来るはずだ。
「だとすれば…」
そう呟いたジンは、集積場に向かって歩き出す。
あそこに積まれたコンテナの中には、事務所が借りているモノがある。
その中には、非常時のための武装が保管されているのだ。
ユニオン本部と事を構えるなら、絶対に必要になる。
「隊長、待ってますからね」
ジンは今や混沌の坩堝と化した、上層街の大路地を一人歩んでいった。
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