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厄介ごとならザッカーマン傭兵事務所へ  作者: サカトウ
Case4.『404』
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01.依頼

 世界が光に包まれたあの日から、ユニオンには不穏な雰囲気が漂い出した。

 競り市場に出回る依頼は、殆どが各地の資源基地からの物資輸送となった。これは、企業が何か大規模な行動に備えている事を明示していた。それを察知した傭兵達は金の臭いを嗅ぎ取り、来るべき時に備えて装備を調達し始めた。

 また、最近は上層街からの食品の流通が減り、下層街では商人が食料を売り渋り食品類の価格が高騰していた。

 それ故に、傭兵にもなれない食い詰め者達は、生きるために商店の襲撃を繰り返し始めてしまう。下層街の商人達がそれを見過ごすはずもなく、彼らは結託して治安維持を専らとする企業に大枚をはたいて、暴徒の鎮圧を依頼した。これにより、事態は良くなるどころか悪化の一途を辿ることになる。

 

『昨夜未明。下層街北西部において治安維持部隊と暴徒らの間で、激しい銃撃戦が行われ――』


 事務所でTVから流れるニュースを見ていたジンは、ふぅとため息をつく。


「今度は北西部でも…もうどこで、暴徒による襲撃が起きてもおかしくないですね」

「まさに、窮鼠猫を嚙むね。企業が下層街の問題に、巻き込んだのがそもそもの間違いなのよ。彼らが介入するまでは、暴徒達も必要最低限の収奪行為しかしてなかった。それなのに、今では私兵部隊に対抗しようと、収奪の対象は武器や精密機器の類にまで広がる始末。上層街に飛び火するのも、時間の問題ね」

「最近だと金になるからといって、暴徒に加わる傭兵も後を絶たないらしいですよ。彼らが加わることで、ユニオン中に戦火が広がっていくのは間違いないでしょうね。ホント、嫌になりますよ…はぁ」


――ドンッ、ドンッ!


 ジンが再び大きなため息を吐いていると、事務所のドアが叩かれた。

 二人はソレに反応して、すぐさま拳銃を抜く。

 ここに暴徒の手が及ぶ可能性は、限りなく少ないが用心に越したことは無い。


「悪いけどその扉を開ける前に、要件を言って頂戴」


 ザッカーマンがそう問いかけると、少しの間を置いてドアの隙間から封筒が差し込まれた。

 その直後に差出人らしき者が、階段を下りていく音が聞こえて来た。

 すぐさま窓の外を確認すると、スーツに身を包んだ男の後ろ姿だけ捉えることができた。

 手紙を読めということなのだろう。


「罠…ではなさそうですね」


 ジンの言葉に頷き、ザッカーマンは差し込まれた封筒を拾う。

 裏返してみると、そこには見覚えのある紋様が浮き出した封蠟が施してあった。


「あっ、それはレイゼン家の家紋じゃないですか」

「恐らくは、送り主はヒルダでしょうね」


 ザッカーマンは、早速ナイフで封を切り中身を確かめる。

 封筒の中を覗き込むと、中には二つ折りにされた一枚の紙が入っていた。

 彼女はソレを取り出し、ジンにも見えるようにテーブルの上に広げる。


『ヒルダ・ファン・レイゼンの守護者として、フィクサーの暗殺を依頼します。報酬はお二人の望むモノを差し上げます。この依頼を受けるか否かは、貴方達の自由です。この手紙の返信は要りません。行動で答えを示してください』


 手紙の内容に目を通したジンは、生唾を飲み込んだ。


「隊長。ここに書かれている『フィクサー』って…」

「アナタの想像している通りでしょうね。ヒルダは、私達にユニオンの全てを取りまとめる元締めを、殺せと依頼してるのよ」

「どうするつもりですか…隊長」


 ザッカーマンは、迷いもせずに即答する。


「私はやるつもりよ。ただ今回ばかりは、アナタに協力しろと強要はしない。もし、この大仕事を私と一緒に成し遂げたいのなら、自分の意志でついて来なさい」


 そう告げられたジンは、すぐには彼女の問いに答えることはできなかった。

 それもそのはずだ。『フィクサー』を敵に回すということは、企業を敵に回すのと同意であり、それはユニオンにおいて死を意味する。しかし、だからと言って何度も命を救ってくれたザッカーマンが、死地に飛び込もうとするのを黙って見捨てる訳にはいかない。

 

「私は――」


 隊長についていきます。

 そう発しようとした瞬間、シンユエの顔が頭によぎった。

 自分がこの依頼に、首を突っ込むことになれば、彼女にも危険が及ぶだろう。

 そう思うと、言葉が続かなかった。


「まぁ、今すぐ決めなくてもいいのよ。今日一日、十分に悩んでから明日答えを出しなさい。今のアナタには、守るべき幸せがあるんだから」


 ザッカーマンはそう言い残すと、ジンを置いて事務所から去っていくのであった。


お読みいただきありがとうございます。

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