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厄介ごとならザッカーマン傭兵事務所へ  作者: サカトウ
Case3.『カイワン』
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08.同舟

「ラマンさん。早速ですが、この牢獄の構造について教えて頂けますか」

「待ってくれ、先にルカを起こしてくれないか」


 ラマンが、ルカと呼ぶ若い男の拘束を外していた、ジンがソレに反応し軽く揺さぶった。が、彼は目を覚まさない。


「こりゃダメですね。隊長が本気で蹴りを入れるから…」

「はいはい、私が悪かったわよ。代わりなさい」


 ジンを押しのけて、眠っている男の手を取り、人差し指と親指が交差する窪みを強く握った。


「かはっ!」


 覚醒したルカに、ラマンが縋りつき顔を寄せる。


「ルカ君。私のことが分かるかね」

「ラマン長官? 一体どうしたんですか。それに彼らは誰なんです」

「化物の事は覚えているね。アレから、私達を守ってくれる…味方さ。彼らは、ここが襲撃されたことを知って、囚人を救出しにきたんだ」

「そうよ。先程ラマンさんから、囚人救出後に貴方達を、ここから脱出させる依頼も受けたの」


 ザッカーマンは話を拗らせないように、ラマンに口裏を合わせた。

 

「砂漠の地下で孤立無援だと思っていましたが、それは心強い。私はルカ・イリネイ二等兵と申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

 彼は立ち上がると、わざわざ二人に敬礼してみせる。

 よく見ると、ルカはまだ顔に幼さの残る青年だった。

 

「私はザッカーマンよ、よろしくね。そんで、あっちはジン」


 彼女に紹介されたジンは、ルカに向かって軽く手を挙げる。


「それと、そんな風に礼儀正しくないで頂戴。私達は、只の傭兵なんだから。さてと…ラマンさん。ルカも目覚めたことですし、本題に移ってほしいのですが」

「あぁ、そうだな。ちょっと待ってくれ」


 ラマンはそう言うと、ルカから離れてデスクの脚を軽く捻る。

 すると、脚の一部が開く。その中には一枚の図面が入っていた。


「なるほど、いくら探しても見つからないわけだ」

「ふふ、驚いたかねジン君。さぁ、これがココの見取り図だ」


 ラマンは、バサッと図面をテーブルに広げる。


「私達がいるのは、B2Fの西端にある長官室だ。そして、救出目標の囚人はB3Fの牢獄にいるはずだ。囚人の名前が分かっているのなら、B3Fのどこに居るのかも教えられるぞ」

「でしたら、それもお教えします。彼の名はヤーコフ・キリエンコ。シンビオーシスの兵器開発局の元局長だった男です」

「なっ…ザッカーマンさん、ちょっとコチラへ」


 ルカの目を気にしてか、ラマンは部屋の端と彼女を招く。


「話が違いますよ、他の囚人ならともかく。ヤーコフは、どんな理由があろうとも、ココから出す訳にはいきません。脱出できたとしても私…いや、私とルカの命も狙われてしまいます」

「でしたら。脱出後にユニオンへと、亡命する事をお勧めします」

「君、そんなに簡単に言うがね。何か伝手でもあるのか」

「ラマンさん、伝手も何も、私はシンビオーシスの衛生兵を一人、ユニオンに亡命させた経験があるのです。亡命後は、お二人の技能を生かせる職場の紹介も致しますよ」

「うーむ。少々、ルカと相談させて頂きたいのだが」

「勿論です。その間に、私達は救出後の脱出ルートの選定でもしておきますよ」


 ラマンはルカの元へ小走りに駆け寄り、再度部屋の隅で相談を始めた。

 彼らの様子を横目で見つつ、ザッカーマンはジンと共に、テーブルに広げられた見取り図を眺める。


「先程ルカから聞いたのですが、B3Fに行く前に、この階層にある武器庫に立ち寄るべきです」

「何か化物に対する、有効打でもあるのかしら」

「そこには火炎放射器が、保管されているらしいのです」

「残念だけど、ソレは使えないわね。磁力は空気にも影響を及ぼすのよ」

「ん? 空気だけなら問題は――」

「まぁ、最後まで聞きなさい。空気は炎よりも、磁石にくっつきやすいの。だから、化物が磁力で空気の層を作ると、ソレよりくっつきづらい炎は、そこに近寄れなくなるのよ」


 ザッカーマンの話を聞いたジンは、がっくり肩を落とす。 


「そうなんですか。映画のように、化物には火炎放射器だと思ったんですが…ん、ちょっと待ってください。空気の層を作るときは、化物の方に寄せ付ける磁力が働いてるってことですよね」


 その言葉を聞いたザッカーマンは、ハッとする。


「ジン! あなた、いいところに気が付いたわね。やっぱり、まずは火炎放射器を回収しましょう」

「おや、何かいい案でも浮かんだのかね? コチラは、話がまとまりましたよ」

「ラマンさん、いいお知らせです。化物への対抗策を、思い付きました。そちらからも、よいお返事を頂けるといいのですが」


 彼女の言葉を受け、ラマンは一度ルカを見る。

 彼も意を決したようで、力強くラマンに頷いた。


「私達は、脱出した後にユニオンへと亡命する事に決めました」


お読みいただきありがとうございます。

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