08.同舟
「ラマンさん。早速ですが、この牢獄の構造について教えて頂けますか」
「待ってくれ、先にルカを起こしてくれないか」
ラマンが、ルカと呼ぶ若い男の拘束を外していた、ジンがソレに反応し軽く揺さぶった。が、彼は目を覚まさない。
「こりゃダメですね。隊長が本気で蹴りを入れるから…」
「はいはい、私が悪かったわよ。代わりなさい」
ジンを押しのけて、眠っている男の手を取り、人差し指と親指が交差する窪みを強く握った。
「かはっ!」
覚醒したルカに、ラマンが縋りつき顔を寄せる。
「ルカ君。私のことが分かるかね」
「ラマン長官? 一体どうしたんですか。それに彼らは誰なんです」
「化物の事は覚えているね。アレから、私達を守ってくれる…味方さ。彼らは、ここが襲撃されたことを知って、囚人を救出しにきたんだ」
「そうよ。先程ラマンさんから、囚人救出後に貴方達を、ここから脱出させる依頼も受けたの」
ザッカーマンは話を拗らせないように、ラマンに口裏を合わせた。
「砂漠の地下で孤立無援だと思っていましたが、それは心強い。私はルカ・イリネイ二等兵と申します。どうぞよろしくお願い致します」
彼は立ち上がると、わざわざ二人に敬礼してみせる。
よく見ると、ルカはまだ顔に幼さの残る青年だった。
「私はザッカーマンよ、よろしくね。そんで、あっちはジン」
彼女に紹介されたジンは、ルカに向かって軽く手を挙げる。
「それと、そんな風に礼儀正しくないで頂戴。私達は、只の傭兵なんだから。さてと…ラマンさん。ルカも目覚めたことですし、本題に移ってほしいのですが」
「あぁ、そうだな。ちょっと待ってくれ」
ラマンはそう言うと、ルカから離れてデスクの脚を軽く捻る。
すると、脚の一部が開く。その中には一枚の図面が入っていた。
「なるほど、いくら探しても見つからないわけだ」
「ふふ、驚いたかねジン君。さぁ、これがココの見取り図だ」
ラマンは、バサッと図面をテーブルに広げる。
「私達がいるのは、B2Fの西端にある長官室だ。そして、救出目標の囚人はB3Fの牢獄にいるはずだ。囚人の名前が分かっているのなら、B3Fのどこに居るのかも教えられるぞ」
「でしたら、それもお教えします。彼の名はヤーコフ・キリエンコ。シンビオーシスの兵器開発局の元局長だった男です」
「なっ…ザッカーマンさん、ちょっとコチラへ」
ルカの目を気にしてか、ラマンは部屋の端と彼女を招く。
「話が違いますよ、他の囚人ならともかく。ヤーコフは、どんな理由があろうとも、ココから出す訳にはいきません。脱出できたとしても私…いや、私とルカの命も狙われてしまいます」
「でしたら。脱出後にユニオンへと、亡命する事をお勧めします」
「君、そんなに簡単に言うがね。何か伝手でもあるのか」
「ラマンさん、伝手も何も、私はシンビオーシスの衛生兵を一人、ユニオンに亡命させた経験があるのです。亡命後は、お二人の技能を生かせる職場の紹介も致しますよ」
「うーむ。少々、ルカと相談させて頂きたいのだが」
「勿論です。その間に、私達は救出後の脱出ルートの選定でもしておきますよ」
ラマンはルカの元へ小走りに駆け寄り、再度部屋の隅で相談を始めた。
彼らの様子を横目で見つつ、ザッカーマンはジンと共に、テーブルに広げられた見取り図を眺める。
「先程ルカから聞いたのですが、B3Fに行く前に、この階層にある武器庫に立ち寄るべきです」
「何か化物に対する、有効打でもあるのかしら」
「そこには火炎放射器が、保管されているらしいのです」
「残念だけど、ソレは使えないわね。磁力は空気にも影響を及ぼすのよ」
「ん? 空気だけなら問題は――」
「まぁ、最後まで聞きなさい。空気は炎よりも、磁石にくっつきやすいの。だから、化物が磁力で空気の層を作ると、ソレよりくっつきづらい炎は、そこに近寄れなくなるのよ」
ザッカーマンの話を聞いたジンは、がっくり肩を落とす。
「そうなんですか。映画のように、化物には火炎放射器だと思ったんですが…ん、ちょっと待ってください。空気の層を作るときは、化物の方に寄せ付ける磁力が働いてるってことですよね」
その言葉を聞いたザッカーマンは、ハッとする。
「ジン! あなた、いいところに気が付いたわね。やっぱり、まずは火炎放射器を回収しましょう」
「おや、何かいい案でも浮かんだのかね? コチラは、話がまとまりましたよ」
「ラマンさん、いいお知らせです。化物への対抗策を、思い付きました。そちらからも、よいお返事を頂けるといいのですが」
彼女の言葉を受け、ラマンは一度ルカを見る。
彼も意を決したようで、力強くラマンに頷いた。
「私達は、脱出した後にユニオンへと亡命する事に決めました」
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